SQM-Lによる光害測定値の検証

梅雨入りしてからこれまでほとんど晴れ間が無く、警報が出るような大雨が降ったりして、星を見る事が出来ない日がずっと続いている。最近は機材関係の更新もないし、天文活動はちょっと一休みという状態である。

さて、SQM-Lを昨年秋に購入してから半年以上が経過したが、その間、季節によってどの程度の違いが出ているのか、お休みついでに比較してみた。

まず砥峰高原だが、おおよそ0時近辺の天頂の値を比べてみた。
グラフを見ると、秋冬(青色)と春(オレンジ色)であまり変わらず、おおよそ21等台前半の数値となっている。
しかし、実際に目で見た感じでは明らかに秋冬の方が良く見える。秋冬は冬の天の川も見えるのに対し、春は黄砂のせいか、夏の天の川がうっすらと見える程度になってしまう。


次に自宅ベランダから南東45°の方向を測定した値を比較してみた。これも0時近辺の値である。これは、秋冬が約18等程度なのに対し、春は17等台半ばまで落ちている。しかしその差は0.5等程度しかない。
実際目で見た場合、秋冬は3.5等星ぐらいまで見えるのに対し、春は2等星がやっとで、1等星しか見えないこともある。それでも測定値は0.5等ぐらいしか変わらない。


このように、SQM-Lによる測定値は、黄砂や春霞などによる影響について、かなり小さめに出てしまうようだ。
これは、昨年から観測地や自宅で測定するたびに感じていたことで、空を見て「今日は状態が悪いなあ」と思って測定してみたら、良い時とあまり変わらないという結果が出て、違和感を覚えることが良く有った。

これに関しては色々考えているのだが、まだよく分かっていない。
とりあえず、下記のように考察している。

例えば黄砂がある場合、地上からの光の反射が増えて空全体が明るくなる影響と、星自体の光が減衰されてしまう影響の両方によって、S/N比が悪化する。しかし、SQM-Lは対象領域の空の明るさ全体を測るので、星の明るさの減少(つまりSの減少)はあまり捉えられず、バックグラウンドの悪化分(つまりNの増加分)だけしか考慮されないので、測定値は目で見た感じほど変わらない。

人間の目は絶対的な明るさよりもS/N比の変化に敏感なので、同じ場所においては、Nの増加が大きくなくても、Sが減少すれば、かなり大きな変化と捉えてしまう。一方、砥峰高原と自宅の測定値には4等級近いの大きな差が有るが、人間の目ではそこまで差が有るように思えない。自宅の良い時(冬に3.5等星が見える程度)と、砥峰高原の悪い時(春で4等星ぐらいしか見えないとき)で、同じぐらいの状態に見えてしまう。

このように、SQM-Lによる測定では眼視における空の状態の良し悪しを完全に捉えきれないのではないか、という疑問が出てきている。

さて、それでは天体写真ではどうかというと、天体写真もS/N比が重要である(Sが同じでも、コンポジット等でNを低減してやれば、品質は向上する)。したがってSQM-Lの値が同じでも、同じS/N比(つまり同じ品質の)画像が得られるとは限らない。

それでは、デジカメを用いて夜空の明るさを測定する「デジカメ星空診断」はどうなのか。これは基準星の明るさを用いてバックグラウンドの明るさを計算しているようなので、S/N比を考慮出来ているのではないかと思う。つまり、SQM-Lよりもデジカメ星空診断の方が、実際の眼視や撮影画像の良し悪しに近い結果になるのでは、と推測する。

今後、デジカメ星空診断のツールなどが公開されたら、一度、眼視、SQM-L、実写などとの比較をしていきたいと思う。

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