今は満月期だし、この土日は天気が悪くて月さえも見えないので、天文活動は一休み。
ということで、昨日は神戸ポートアイランドで開催された「神戸医療産業都市・京コンピュータ一般公開」へ出かけてきた。一番の目当ては、普段は入ることが出来ない「京コンピュータ」の一般公開を含む、計算科学関連施設。
ポートライナー「京コンピュータ前」駅を降りてすぐのところに、これらの施設が隣接して建てられている。
左側の建物が、京コンピュータが入っている理化学研究所・計算科学研究機構。
それと渡り廊下で結ばれている右側の建物(半分画面からはみ出ている)が、計算科学センタービルで、ここの1~2階は計算科学振興財団(FOCUS)、3~7階は兵庫県立大学大学院が入っている。FOCUSは企業が京などのスーパーコンピュータを利用する際の支援をする機関で、この建屋の1階に独自のスパコン(FOCUSスパコン)を設置運用している。
京の計算能力が約10.6ペタFLOPSで、FOCUSスパコンは27テラFLOPSなので、FOCUSスパコンは京の約400分の1程度の能力となる。しかし、FOCUSスパコンは汎用性の高いx86の汎用CPU(インテルXeon)とLinux OSなので、利用するためのハードルは低い。それに利用料金が1ノード(12コア)を1時間使って100円(税抜)というのはかなり安め。また今冬には245テラFLOPS(京の40分の1)程度の計算機を追加増強する予定だそうだ。ただし、この増強分の能力のほとんどが、汎用CPUではなく「コプロセッサ」による物なので、プログラム次第と言ったところ。
うんちくはともかく、左側の建物へ入り、エレベータで6階の「京コンピュータ」見学室へ。この部屋に入るのは、昨年の一般公開以来2回目。今回は写真撮影もOK。
赤くて速そうな(?)筐体が整然と並んでいる。全部で864台あるそうだ。
まあ、これは見ていても何かが動いたりするものでは無いので面白味には欠けるかもしれないが。とにかく柱のない空間によくこれだけ並べたと感心する。
一般公開なので、見学室は入れ替わり立ち替わり人が一杯。写真OKということで、多くの人がスマホで写真を撮っていた。
同じ建物の1階には、京に関する様々な説明が展示されている。この展示コーナーは普段でも見学可能(平日昼間の受付が開いている時間)。
システムボードは、CPUとメモリがほとんどのシンプルな構成に見えるが、水冷のための部品とパイプで覆われている。右側の太い水冷ホースが目立つ。
ノード間の接続は「Tofu(とうふ)」という6次元的接続で、データのやりとりを効率的に行っているそうだ。
京を見た後は、隣接する各施設の一般公開展示を一通り見て回った。
甲南大学では、ずらっとならんだ双眼顕微鏡で様々な生物の組織などを見たが、「やはり光学観察は双眼が良い」と再認識し、顕微鏡が欲しくなったり、望遠鏡に双眼装置を付けたくなったり、物欲をかき立てられて困った。
兵庫県立大学では3次元可視化装置の体験ツアーをしていたが、こちらは定員一杯で参加できず残念。シミュレーション学研究科の展示を見て回った。そういえば、「西はりま天文台」も兵庫県立大の管轄だし、県立大の理系はいいなあ。
神戸大学統合研究拠点では、同じく3次元可視化システムの映像を見る事が出来た。といっても可視化装置(パイ・ケイブ)の本体では無く、350人入るホールでの、3次元メガネ使用によるスクリーン投影。
ここでは、宇宙の始まりから銀河が形成される様子、超新星爆発のメカニズムと過程、従来より細かい500m格子による気象シミュレーション、惑星探査機用イオンエンジンのプラズマ放出のシミュレーションなどを、迫力のある3次元映像で見る事が出来て、天文ファンとしては大満足の内容。
これも、プラネタリウム番組やTVの科学番組等のエンタテイメントのプロの作品では無く、基本がパワーポイントのスライドだったり、ナレーションを研究者の方自らしていたり、専門用語が多用されているなど、適度に手作り感・学会発表的なアカデミック感があって、むしろ良い感じだった。
天文趣味としてはどうしても観測系(写真撮影・観望・簡単な記録など)がメインになるが、今回のような研究を見ると、理論・シミュレーションも良いなあと思う(天気に左右されないし)。昔は中野主一さんの天文プログラムの書籍を買って、非力なPCにプログラムを打ち込んで動かしたり、自分なりにカスタマイズして遊んだものだが、今はステラナビゲータを使うだけになってしまった。
その他、医療関係の公開施設も一通り見て、様々な科学分野への関心が高められた一日だった。
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