デジカメ天体写真へのDxO PureRawの適用検討

現在DxOがブラックフライデーセールをやっていて、PureRawを購入しようかどうか迷っている。デジカメで撮影した天体画像のRAWファイルは基本的にDNGに変換し、RStackerでダーク減算・フラット補正をした後にLightroom Classicで現像しているが、この場合のノイズ低減は現像処理であるCameraRawのノイズ低減処理になる。これは結構優秀で今のところ十分かと思っていたが、PureRawはもっと良いらしい。

PureRawはDxOの画像処理ソフトであるPhotoLabからノイズ低減と光学補正を行う部分を抜き出したもので、RAWファイルに対してノイズ低減・光学補正・デベイヤー処理をしてDNG形式へ書き出して、他のソフトで現像処理できる(デベイヤー済みなので現像と呼ぶのかどうかは分からないが)。ただし現行のPhotoLab6に入っているノイズ低減の最上位機能である「DeepPRIME XD」は現行のPureRAW2には入っておらず「DeepPRIME」止まりだし、詳細なパラメータ調整はPhotoLabでのみ行える。そう考えるとPhotoLabを買うのが正解のように思うが、画像処理は主にPhotoshopとLightroomを使うため、ちょっともったいないようにも思う。

とりあえずPureRawの性能を確かめるため30日の体験版を入れてみた。確認方法としては一枚撮りの星景画像をRStackerでダーク減算のみ行ってDNGに書き戻したものを、PureRawでノイズ低減処理してCameraRaw処理のものと比較した。対象は下の画像。何の処理もしていないので光害カブリで眠い感じになっている(撮影時の詳細はこちらの記事参照)。

  • Pentax KP, SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM -> 18mm F2.2
  • プロソフトンクリア+スターリーナイトフィルター
  • ISO3200, 60sec.
  • アストロトレーサーによる恒星時追尾

これを下記の5通りで処理した。

  • (1)ノイズ低減なし。
  • (2)CameraRawでノイズ低減(輝度L=30, カラーC=25)
  • (3)CameraRawでノイズ低減(輝度L=60, カラーC=25)
  • (4)PureRawでノイズ低減(PRIME)
  • (5)PureRawでノイズ低減(DeepPRIME)

現像はLightroom Classicを用いており、PureRawで事前処理したものについてはLightroom(CameraRaw)側でのノイズ低減処理を行っていない。また、PureRawで事前処理したものはCameraRaw処理のものに比べてやや暗くなったので、背景の明るさが同程度になるよう調整した。

上記(1)は輝度ノイズ設定値30, カラーノイズ設定25で、私が標準的に使っている設定。(2)は背景のノイズが(5)のDeepPRIMEと同程度になるよう強めに調整したもの。輝度設定値が60となった。(4)と(5)はノイズ低減のみを適用し光学補正は行っていない(試しに光学補正も適用してみたが周辺減光補正が過補正になったり、ひずみ補正による変形で(1)~(3)と比較しにくくなった)。

結果については、ノイズが目立つ水平線部分をピクセル等倍で切り出した(下図)。

ノイズ比較(水平線部分)
ノイズ比較(水平線部分) ピクセル等倍切り出し

まず(2)のCameraRaw:L30は空や海面のノイズがまだ目立つ。(4)のPureRaw:PRIMEはノイズはきれいに消えているが右上の星が消えかかっている。そうなると(3)のCameraRaw:L60か、(5)のPureRAW:DeepPRIMEのどちらかが良さそうである。この両者とも空と海面のノイズは十分消えており、右上の星も残っている。しかしよく見ると(3)の方は島のディテールがぼやけてしまっている。一方(5)の方はしっかり残っている。

次は天の川の部分で比較した。(2)と(4)は脱落したので(3)と(5)だけの比較になる。

ノイズ比較(水平線部分) ピクセル等倍切り出し
ノイズ比較(水平線部分) ピクセル等倍切り出し

これは一見、(3)の方が低ノイズのように見える。しかし天の川の薄い部分のノイズはほぼ同等であり、(3)の方は天の川の入り組んだ部分のディテールがかなり失われている(そのため滑らかになり一見低ノイズに見える)。CameraRawのディテール回復オプション(ディテール)は0にしており、これを上げていくとディテールは回復するが、そうすると海面や空のノイズが出てきてしまう。

このようにノイズ低減効果とディテールはトレードオフの関係だが、(5)PureRaw(DeepPRIME)の方はその両者が高いレベルでバランスしていると思う。

(3)と(5)の違いは縮小した画像でも確認できる。下は現像後のTIFFをPhotoshopで25%に縮小してJPEG出力したもの。

(3)CameraRawでノイズ低減(輝度L=60, カラーC=25)、25%に縮小
(5)PureRawでノイズ低減(DeepPRIME)、25%に縮小

(5)の方が天の川の構造、暗黒星雲の入り組みがはっきりしている。

もうひとつPureRawが有利な点として輝点・黒点ノイズの低減がある。ダーク画像が悪かったためか目立つ輝点と黒点があったが、(5)ではそれが目立たない程度に軽減されている(完全には消えていないが)。

輝点・黒点ノイズの軽減

このように、PureRawはCameraRawによる現像前に使用することで、今よりも画像の品質を向上できることが分かった。

早速購入したいところだが、今回のブラックフライデーセールはどうも思っていたよりも割引率が悪い。昨年と同じ50%引きを想定していたが、PureRaw2は\13900->\10500の24%引きでしかない。PhotoLabが\23900->\16900の29%引き。PureRawに\6400足せばPhotoLabが買える。PhotoLabはDeepPRIME XDが使えるが、試用版で試したところ使い方が悪いためか、どうしてもPureRawのDeepPRIMEを超える結果が得られなかった。

また、主にCMOSカメラ画像処理の方で多用しているNik Collection5が\16500->\7900と52%引きになっておりこちらも気になるが、これは現在使っている「2」からあまり変わっていないように思える。特にノイズ低減のDfineは全く同じに見える。ただ今後のアップデート対応などを考えて最新版にしておくべきかどうか。世界的なインフレや円安の状況が見通せない今、割引があるうちに買っておくべきという気もする。

ブラックフライデー最終日(11/28)までにいろいろ考えて結論を出さなければ。

なお、複数枚スタック(コンポジット)する画像についてはスタック後にノイズ低減処理をするため、PureRawの適用は今のところ考えていない。こちらについてはPhotoshopのCameraRawプラグイン、Dfineプラグイン、DeNoise AIプラグインを使っている。PixInsightも所有しているものの、今のところノイズ低減処理は難しくて使いこなせておらず、Phtoshopのプラグイン群&マスク処理以上の結果を出せていない。

今見ると、Denoise AI もブラックフライデーで12/2まで25%引きのようだ。さらに迷うところ。


(2022/11/28追記)結局「PureRAW 2」と「Nik Collection 5」を購入した。PhotoLab 6 は見送り。

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