(2023/7/23追記)動画のまとめを作成した(下のYouTubeリンク)。
2023年4月22日(土)に熊本駅から鳥栖駅(佐賀県)まで「SL人吉」に乗車したが、その翌日(23日・日曜)の朝には出雲市駅前(島根県)に居た。
なんでこんな事になるのかと言うと、今年度で廃止になる観光列車の指定券を取るべく色々手を伸ばしていたら、4月22日(土)の「SL人吉」に加え、翌日23日(日)の「奥出雲おろち号」が確保できてしまったから。通知が来たときは唖然としたが、同日じゃなくて良かった。同日なら詰んでた。
良く考えれば鳥栖から出雲市ぐらいなら余裕で移動できるはず(たぶん)と思った。結局ちゃんと移動出来て翌朝にここに居る。これが岩手県の「SL銀河」なら本当に詰んでたかも(SL銀河は指定席確保にチャレンジし続けるも取れなかった)。
本当は、奥出雲おろち号乗車には周辺の観光を合わせて来たかった。出雲市まで来て出雲大社にすら参拝出来ないとか、ちょっと慌ただしすぎる。三次市にも行きたい施設があるし、天文ファンとしては天文施設がある三瓶山にも行きたかったが、またの機会にして、今回はひたすらトロッコ列車に乗ることになった。
「奥出雲おろち号」が廃止になった後は、「あめつち」が木次線に入るそうだ。ただし出雲横田までで、出雲坂根のスイッチバックは体験できないらしい。
発車は8:45だが、15分前ぐらいにホームに上がると、既におろち号が止まっていた。
牽引機はDE10 1161号機。青色の塗装が鮮やか。元々おろち号の牽引機はDE15 2558号機が主体でこのDE10-1161は予備機であり、塗装も本来の赤色だった。しかし現在はDE15-2558が引退してしまったので、このDE10-1161のみで運用している。
この前日に乗車したSL人吉には後補機としてDE10 1195号機が連結されていたし、4月初旬に乗車した嵯峨野トロッコの牽引機はDE10 1104号機だった。この4月は自分的に「DE10祭り」だ。
奥出雲おろち号の客車は2両編成で、機関車寄りの2号車(スハフ12 801)は普通の客車で、控室(控え車)となっている。
一枚の指定席券で、1号車のトロッコ車両(スハフ13 801)と、この控え車の同じ座席番号の席を使用できる。悪天候や暑い・寒いなどトロッコ車両に居るのが辛い時にこちらで休憩できる。座席は向きが変えられる2人掛けなので、知らない人と向かい合わせになることも無い(一人参加の場合は隣に知らない人が来るが)。
1号車はトロッコ車両で、こちらがこの列車のメインとなる。窓が無い開放感あふれる車両。天井も色々装飾されている。座席は木で固定式なので、他の人と向かい合わせで相席になる場合もある。私と同行のA-2さんはL型で横向きの4人掛けベンチのうちの2席となった。他の方と相席だが、控え車もあるし、前面展望とかいろいろ移動するので、あまり一緒に居る時間は無く、窮屈さは無かった。
そしていよいよ出雲市駅を発車。この列車(備後落合行き)は、本来、機関車が後ろから2両の客車を押す形で運行される。しかし出雲市から宍道までは機関車が先頭で逆向きに走り、宍道から木次線に入る際に向きを変えて機関車が後ろになる。
出雲市を出たすぐ後、直江駅では10分停車。ホームに屋根が無いので明るい環境で客車の撮影が出来る。
トロッコ車両のスハフ13 801の車掌室部分は運転台に改造されており、ここから後ろのDE10機関車を制御できる。宍道から備後落合はこちら側が前になって運行される。
2号車(控え車)にはトイレと洗面台が設置されているが、トイレは和式なので、和式トイレが苦手な人は注意。洋式トイレは出雲坂根駅にあるそうだが停車時間はわずか5分。終点の備後落合駅には(工事現場にあるような)仮設の洋式トイレがあった。
この奥出雲おろち号は基本の運転区間が木次から備後落合で、この直江駅を含む出雲市~木次は特定日のみの延長運転区間。そのためまだ乗客が少なく車内はガラガラ。この時点で乗っているのはどうやら鉄道ファン率が高いようで、みんな車両が空いているあいだに車内外から写真・動画を撮りまくり。そして行き違いの特急スーパーまつかぜもみんなで撮りまくり。
このスーパーまつかぜ1号はこの直江駅で運転停車し、反対向きのスーパーまつかぜ6号(鳥取行)と行違った(それは撮り損ね)。
宍道に9:17到着。ここで向きを変えるので9:28まで9分停車。ここからトロッコ車両を先頭にして木次線に入る。
木次線は線路に草が生い茂り、トロッコ列車が似合いそうなワイルドな状態。そこをゆっくりと昇っていくのは、遊園地のアトラクションに近い感覚。子供でなくてもこれは楽しい。
10:06、木次に到着。ここからがおろち号の通常の運転区間となる。
ポップなラッピングの普通列車と行き違い。「き(はーと)」で「きすき」。
ここで多くの乗客が乗り込み、トロッコ車両内が一気に賑やかになった。ここからがおろち号の本番。
新緑の渓流沿いを進む。風がやや冷たいが気持ちいい。
前面展望は見ていて飽きず、ずっと張り付いていたいが、長時間占有するのは迷惑なので、他の方と小刻みに交代しつつ楽しんだ。
トンネル内ではトロッコ車両天井の「おろち」のイルミネーションが光る。
各停車駅で食べ物や物品販売も色々あった。停車時間が短いので、ホームではなく車内に入ってきて販売される形態が多い。周りの人たちは名物のそばや牛べんとう等を次々に平らげていたが、私は胃袋が小さめなので、お菓子類を食べることにした。
まずは、田村屋のクリーム大福。
カスタードクリームの中にカラメルソースが入ってプリンのような内容。今までの大福で経験したことのない美味さ。かなり冷やして販売されており買いたてはかなり固い。すぐにかじってアイスのような冷たさを味わうも良し、お好みの固さに溶けるまで待ってから食べるのも良し。これはリピートしたくなるが、店舗とおろち号でしか売ってないそうだ。
出雲横田駅からはワゴン販売のおばちゃんが乗車(終点まで居られた)。お菓子や調味料、グッズなど。ノリの良い素敵なおばちゃんで、とりあえずおいしそうなお菓子を購入。
あんこがぎっしり詰まっているが、しつこくなく食べやすい甘さ。小さいので、そばや牛弁当をがっつり食べた後のお茶受けに良さそう。
そうしているうちに、列車はこの木次線名所の三段式スイッチバックがある出雲坂根駅に到着(到着は11:40)。駅はスイッチバックの最下段にあるので、まずスイッチバックに入る前に駅に停車する。そして、駅のホームに入っていくと、前日のSL人吉を彷彿とさせるモクモクとした煙と、食欲をそそる香ばしい匂いがただよっていた。それは「焼き鳥」。
停車時間が5分しかないので、同行のA-2さんに急いで買いに行ってもらった(どの駅でも思うが、停車時間が短すぎて慌ただしい)。そしてこの焼き鳥が激ウマ。肉は柔らかくジューシー、炭火焼の焦げ目が香ばしい。
これって、おろち号関係なく、この時間帯に出雲坂根駅に行けば食べられるのかな。
私の方は、延命水はパスしておろち号と駅を撮りまくり。
さて、出雲坂根駅を11:45に出発すると、いよいよ三段式スイッチバックに入る。私のスイッチバック体験は21年前に乗った肥薩線以来だと思う。
まずこれまで後ろから押していたDE10機関車を先頭にして、スイッチバック2段目に入った。
そして2段目の突き当りでいったん停車。ここから再びトロッコ車両を先頭にして3段目に入る。そのため運転士さんはDE10機関車からトロッコ車両内を通って1号車運転室に移動する。その際、例のワゴン販売のノリの良い素敵なおばちゃんが「拍手と声援でお送りください」と案内したものだから、運転士さんは乗客の拍手と声援に迎えられて運転室に向かう事に。
みなさん、大概ビールがまわっているのかな。観光列車ならではの光景。自分もこのノリは決して嫌いじゃない。
そして、再び1号車(トロッコ車両)を先頭にして、スイッチバック3段目へ出発。乗客の前面展望エリアと狭めの運転席が近い。展望を優先した、観光列車向けの乗客優先な造り。
少し分かりにくいが、スイッチバック2段目と1段目の線路を見下ろすことが出来た。
そしてしばらく走ると、見どころの一つである「奥出雲おろちループ」が見えてきた(12:06頃)。
ループ部分は木が多くてちょっと見えにくい感じ。
三井野大橋は思っていた以上に高い。ここはいずれ改めて車で来てみたいと思った。
次にJR西日本で最も標高が高い(727m)、「三井野原」駅に停車(12:08)。「高天原」とも呼ばれているそうだ。
そして12:36、ついに終着の「備後落合」駅に到着。
ここで奥出雲おろち号は12:36から21分間停車し、12:57に木次行きとして折り返し出発する。多くの乗客は折り返し便に乗って戻っていくようだが、私はここ備後落合駅に残り、芸備線で新見方面を目指すことにした(実際は落石で運休中なので代行バスだが)。
折り返しの木次行はDE10機関車が先頭で運転されるので、運転士さんはDE10に乗り込む。
DE10形ディーゼル機関車は元々入れ替え用としての運用を重視されていたので、進行方向の頻繁な切り替えに対応できるよう、運転席は進行方向に対し横向きに設置されている。椅子は回転式で、長距離運転の際は体を前向きにすることが出来るらしい。
12;57、木次行き奥出雲おろち号が備後落合駅を出発。私は駅でお見送り。
出雲市8:45~備後落合12:36と4時間近い乗車だったが、楽しい事やきれいな景色、美味いもの満載で、とても楽しいトロッコ列車旅だった。少し寒かったが晴天に恵まれたのも幸運だった。
この後は14:36まで備後落合駅での滞在と、そこから代行バス、やくも、新幹線で帰宅することになる。
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