デジカメ・CMOSカメラのセンサーのゴミ対策

厄介なセンサーゴミの魔の手につかまる

5月15日に発売された「アンドロメダ銀河かんたん映像化マニュアル」。当ブログから「A-1」名義でいくつか画像を提供している。詳細は下記記事参照。

この本の中の「JUNZOの銀河星雲趣味スゴロク」の章で、著者のJUNZOさんが天体趣味・天体写真趣味をどのように進めてきたかを説明しているが、CMOSカメラによる撮影が一通り軌道に乗った段階で、センサーのゴミによる画像の黒い影に悩まされるようになったとの話がある。この件で相談を受けたとき、「やはり誰もが通る道か・・・」と思った。初心者状態から着々と天体撮影スキルを身につけていった著者であるが、それでも例外なくセンサーゴミの魔の手につかまったようだ。

実際このセンサーゴミの問題に根本的な解決策はあるのだろうか。おそらく無いのでみんな苦労しているのだろう。これは天体撮影に限った話ではなくデジカメによる一般撮影でも問題となっているが、天体撮影はセンサーを上に向けてシャッターを開けている時間が長いのでゴミも付きやすいのだろう。デジカメはメーカーごとにセンサークリーニングなどの対策を色々しているが、天体撮影専用CMOSカメラにそのようなものは無いので、使用者が意識して対策する必要がある。

今回、私の対策についてまとめて書こうと思う。

ゴミを取る道具

私は初めはCMOSカメラではなくデジカメ(デジタル一眼レフ機)から天体のデジタル撮影に入ったので、まずはデジカメでの対策が必要だった。デジカメは自動センサークリーニング機能が付いているものが多く、それを頻繁に動作させていたが、それでも撮影中にゴミは付いた。厄介なのは、おそらくミラー動作やシャッター幕動作による振動や風で、ゴミが1コマ毎に移動してしまう事。移動するゴミはフラット画像が適合しなくなるので最悪である。フラット処理によるゴミの影除去があてにできないとなると、やはりゴミが付いたらすぐに掃除しなけらばならない。とりあえず自動センサークリーニングしてみて、それでも取れなければブロワーで吹いてみて、それでダメなら道具を使って除去する必要がある。なお、メーカーサポートでもクリーニングしてくれるのだが、それに出して帰ってきても、結局すぐに新しいゴミが付くので、よほどひどい固着ゴミでない限り自分で掃除するようになった。

まず最初に使っていたのが有名な「PENTAX イメージセンサークリーニングキット O-ICK1 」。

イメージセンサークリーニングキット O-ICK1
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いわゆる「ペンタ棒」である。これはそこそこ効果的で、これで間に合わせてた時期もあった。でも、なぜかたまにゴミを増やしてしまったりすることもあって、完全に除去するのにかなり時間がかかる場合もあった。

そこで次に使ったのが、使い捨てタイプの「スワブ」というワイパーでセンサーを拭くVSGOのクリーニングキット。センサーサイズによって色々あるが、私の場合は所有するデジカメがAPS-Cだったので、APS-Cのキットを購入した(下記はヨドバシのリンク)

https://www.yodobashi.com/product/100000001006100342/

これはクリーニング液とスワブがセットになっているが、クリーニング液に比べてスワブの消費が多いため、スワブだけの商品もある。基本的にはクリーニング液を使わず乾いたスワブで拭くが、取れないゴミがある場合はクリーニング液を1~2滴新しいスワブに垂らして拭き、さらに新しい乾いたスワブで拭く。コツは、とにかくスワブをケチらずどんどん新しいスワブを使う事。1本200円ぐらいするので躊躇するが、ゴミと長時間格闘してイライラした時間を過ごすよりは、1000円ぐらいかけてスッキリする方が良い。時給1000円としてもスワブ5本分である。

そして、これはペンタ棒よりも効果が有った。一回の掃除でクリーニング液も使い、スワブを2~4本ぐらい消費するとゴミは完全に取れるようになった。

また、撮影中に重力によってセンサー面にゴミが落ちてくるのを低減するため、ミラーボックス内やレンズ(またはレデューサー)の後玉面をよく見て、ゴミがあるようならばペンタ棒で除去した。

なお、天体専用CMOSカメラを使いだしてからも同様で、CMOSセンサーのすぐ上にあるカバーガラスに付いたゴミが画像に影を落とすので、そのカバーガラスを掃除した。これも「ペンタ棒」で除去しきれないゴミでもVSGOのキットできれいに取れるようになった。

なお、ゴミの確認はカメラを実際に望遠鏡に付けてELパネルでフラット撮影し、画像処理ソフトで強調処理して確認している。

ゴミの付着防止に防塵フィルター

JUNZOさんも著書で書いている通り、ゴミ掃除自体が大変なのであまりやりたくない。そこでCMOSカメラのセンサーのカバーガラス面にゴミが付きにくいよう、防塵フィルターを付けている。なお、デジカメであれば「マウント内フィルター」が同様の効果をもたらすと思うが、私は直焦点撮影をCMOSカメラに移行したので、デジカメについては未対策である。

まず、ASI294MC Pro, ASI183MC Proについては、ZWOのEOSマウント用アダプタ内に48mm(2インチ)のフィルターを装着できるので、その位置に入れることにした(各種鏡筒側も全てEOSマウントで統一している)。

ZWO EOSマウントアダプタ内に防塵用フィルターを装着(ピンク色の円で示した位置)

フィルターが透明で分かりにくいので、上の画像にはフィルター位置にピンク色の円を描いた。この位置ならCMOSセンサーからある程度離れているため、ゴミの影が目立たなくなる。

次にASI462MCのように1.25インチスリーブを使うカメラは、スリープの先端に1.25インチのフィルターを付けた。

ASI462MC(右)の差し込みスリーブ先端に防塵用フィルターを装着

フィルターを装着する際にゴミが入らないよう、ほこりの少ない場所で、カバーガラスの掃除が終わったらすぐに防塵用フィルターを付ける。フィルター面にゴミが付いていたら防塵領域(CMOSセンサーと防塵フィルターの間の領域)にゴミが入るので、防塵フィルター自体やスリーブ内面もよく掃除して、ペンタ棒などできれいにしておく。こうして防塵領域を密閉し、防塵フィルターは滅多に外さないようにする。

防塵フィルターは滅多に外さないと決めると、対光害などのフィルターワークに支障が無いような透過特性の防塵フィルターを使う必要がある。例えばASI462MCは赤外域でモノクロカメラとしても使える特性があるので赤外も透過させたいし、Comet BPフィルターは紫外領域まで通過させているため、それをブロックしたくない。そのため一般的なUV/IRカットフィルターは使えない(もちろん、いつでもUV/IRカットするというならばOKである)。理想は全波長100%通過だが、そのようなフィルターは無さそうだった。

最も通過波長域が広そうなのは、各社の「クリアフォーカシングフィルター」と呼ばれるもの。私はとりあえずオプトロンの「クリアフォーカシングフィルター」を入れた。これは380nmで約80%、700nmで約98%透過するようだ。

Clear focusing filter is designed to highly pass the visible spectral region 420-680nm at 98.5% transmission-Optolong Optics Co.,Ltd.
Optolong Clear focusing filter is designed to highly pass the visible spectral region 420-680nm at 98.5% transmission

700nm以上の赤外域の特性が不明だが、BaaderのClear focusing filterは900nmの波長で90%程度の透過なので、おそらく同じようなものと思っている。

なお、私が所有するZWO社のCMOSカメラは全てカバーガラスがARコーティング仕様で、UV/IRカットはしないので、紫外・赤外の通過が見込める。しかし同じZWO社でもASI2600MC Pro他いくつかのカメラはUV/IRカット仕様だそうなので、注意が必要だ。詳細は下記の星見屋さんのサイトが参考になる。

ZWO社製カメラ カバーガラスの種類とサイズ一覧 - ★Hoshimiya.com★星見屋 海外天体望遠鏡・パーツメーカー各社 正規代理店

どうやら最近のカラー仕様カメラがUV/IRカットのようだが、カラーであっても紫外や赤外を通してほしい場合もあるし、これはちょっと疑問に思う(一応、交換はできるようだが)。

さて、防塵フィルターを付けたからといって、ゴミの影を完全に防ぐことが出来るわけではない。防塵フィルター表面のゴミの影は消えたわけではなく、淡く大きく広がって分かりにくくなっただけである。そのため非常に強い強調処理で淡い星雲をあぶりだすときなどは、目立つようになる場合もある。したがって、防塵フィルター表面のゴミ(特に大きなゴミ)はマメに取り除く必要がある。

また、光学系に入るフィルターが増えることで光量の損失が起こるし、場合によってはゴーストが発生するなどのデメリットもある。ただ私としてはこれらのデメリットはゴミの影による精神的ダメージよりはマシなので、気にしないことにしている。

なお、クリアフォーカシングフィルターの先には重ね付けのためのネジが切られていなかったので、対光害フィルターやUV/IRカットフィルターなどは、レデューサーやパワーメイトの先端に付けるようにしている。

撮影後にはフラット補正で救済

センサー面・カバーガラス面を掃除し、防塵フィルターで対策しても、それでも防塵領域に何故か入り込んだゴミや、防塵フィルター上に大きなゴミが落ちて、画像に影が残る場合がある。そうなると、やはりフラット補正に頼ることになる。

上述した通り、フラット補正によるゴミ対策の最大の敵は「移動するゴミ」である。したがって私は1対象撮影毎を目途にフラット画像を撮影することを心掛けている。1対象を複数日にわたって撮影する場合は、その日ごとに毎回撮影する。ゴミは重力や振動で移動するため、LIGHT撮影後には鏡筒を動かさず、カメラにも触れず、そっとELシートをを筒先にかぶせて撮影する。子午線反転前も同じ。ただし最近はあまりゴミ問題が無いのでサボり気味で、一晩の中間時点(0時頃)に1回撮るだけで済ませることも多い。

フラット画像の枚数は、その晩の1対象の撮影コマ数以上は撮るようにしている。ゲイン(デジカメならISO感度)はLIGHTに合わせた方が良いのかな、と思うこともあるが、ノイズが少ない低ゲイン(低ISO感度)で撮影している。今のところこれで問題は無さそう。

フラット補正画像の撮影光源には、ELシートを用いている。これは鏡筒のサイズに応じて色々と作り分けてきた。

それでもゴミの影が残ったら

これまでの対策を経ても、移動するゴミ等でゴミの影が残ってしまった場合はPhotoshopでちまちまと補正するしかない。ゴミの影部分を選択して境界を適度にボカし、ゴミ部分のレベルを調整して周りとなじませるとか、コンテンツに応じた塗りつぶしをするとか。実はこの作業についてはあまりやったことが無い。この辺りについては、一般撮影で青空のゴミの影などを修正する方法と同じなので、必要が出てくれば検索しながらやってみたい。天体の場合はStarNetで星と背景を分離してから実施すると良いかも。

今のところ、CMOSカメラについては防塵フィルターの効果が大きくゴミの影が出る頻度は減ったが、デジカメの方は未対策で、いまだにゴミが写ることがある。デジカメについてはメーカーの方でもうちょっと効果的な対策を開発してほしいと思う。

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