最近になって日本でも発売された、Askar ACL200 (200mm, F4)を購入した。
その経緯は後回しにして、まず箱から取り出した時の第一印象としては「でかい・重い・冷たい」。冷たいのはフードまで金属製であるため。
手持ちの同クラスのレンズと大きさを比べてみた。
200mmレンズとして一段明るいEF200mm F2.8L IIUSMの重さが765gで、ACL200が1.8Kgなので2倍以上になる。カメラレンズとして通常撮影にも使えるが、手持ちではかなり厳しい重さ。口径50mmレンズとして同クラスのミニボーグ50(アクロマート)は鏡筒込みで320gなので5倍以上。ただし長さはフード込みで通常の200mmレンズと同じ程度になる。
絞りリングにクリックは無く無段階に回る。絞って使う場合はフラット撮影するまで不用意に動かさないよう、絞りリングのストッパーネジを確実に締める必要がありそう。
鏡筒後端はM48のオスネジになっている。内側に植毛紙が貼られているのが見える。
購入時に気になっていたのが、Askarブランド純正のカメラアダプターが無い事。適当なアダプターを付けてカメラ取付時にバックフォーカスが合うかどうか分からない。公式サイト(http://www.askarlens.com/index.php/class1/179.html)では、鏡筒後端(M48ネジ突起を除く)からのバックフォーカスが55mmとなっている。とりあえず一緒に購入したSkyWatcherのM48カメラアダプター(EOS用)を取り付けた(この後、アダプターねじ込み時にカメラと鏡筒の回転位置が合うように、アダプターのイモネジをいったん緩めて調整している。)
EOS60Daを取り付けた時、鏡筒後端からカメラの撮像面マークまでの距離がほぼ55mmになった。バックフォーカスはちょうど適合し、一安心。
とりあえずフラット画像を撮影して、周辺減光を確認した。
比較対象は上で並べたEF200mm f2.8L II USMのF2.8開放とF4.0。ACL200の方は、おそらく開放で使うことになるのでF4.0のみ。
ACL200はフルサイズ対応とのことだが、私は現在フルサイズカメラを所有していないため、APS-C(x1.6)のEOS60Daを撮影に用いた。レンズ・鏡筒のフード先にこちらで作成したELシートによるフラットパネルを押し付けて撮影した。
画像処理はRAWファイル(CR2)をステライメージ8で読み込み、ホワイトバランスのみ調整してデベイヤーし、レベル調整(最小値とレンジ)で強い画像処理を想定し、レンジ幅を65535から3000まで縮小。中央付近の輝度が(100/255)程度になるよう最小値を調整した。
以下はリサイズしてJPEG出力したもの。
APS-C(x1.6)での周辺減光は、EF200mm F2.8L II USMをF4.0に絞った時とほぼ同等となった。かなり強い強調を想定した処理でこの程度なので、両者ともかなり優秀(フルサイズ対応レンズをAPS-Cで使っている余裕があるためかもれないが)。光害のない撮影地で背景が暗く、明るい天体ならフラットはいらないかもしれない。
EF200mm F2.8L II USMをF2.8開放で使った場合はAPS-Cでも周辺減光が目立つ。また中央と周辺のカラーバランスの崩れも顕著になる。ただそれでも、適切にフラット処理すれば実用になる(下の記事参照)。
EF200mm F2.8L II USMの絞り開放については、周辺減光よりも周辺星像や少しのピントズレによる赤ハロ・青ハロの発生が問題だった。これは銀塩時代は問題なかったが、デジタルの高画素時代には更に星像の改善が必要となってきた。その一方、カメラの高感度化によりF値は4程度で良くなってきた。
それならば、EF200mm F2.8L II USMをF4に絞って使い続ければそれで良さそうだが、最近私の手持ちカメラのマウントがバラバラになってきた事情がある。
私は元々銀塩のFDレンズ時代からのCanon派だったが、デジカメ時代になってからあまりこだわりがなくなり、そのとき天体撮影に向いていそうなカメラを半衝動的に買っていると、マウントがバラバラになってしまった(上画像以外にも、Kiss X2が2台ある)。それはそれで楽しいのだが、レンズに困ることになった。
EFレンズは電子制御式なので、マウントアダプターを使うと基本は開放で使うことになる。電子制御できるアダプターもあるが高価だし、裏技的な手法も心細い。そうなると、レンズは完全マニュアルでマウント交換式が良い。
今回、EF200mmがあるのにACL200を購入したのは、EOSマウント200mmクラスでの星像の改善を期待するのと、X-E2とKPに天体用途で優秀な望遠レンズをあてがう目的があった。
更にZWO社などのCMOSカメラの低価格化を考えると、今後は廉価な「小サイズ・微細センサーピッチカメラ」を使う機会も増えると思う(手持ち品で例えると、1インチ・2.4μmピッチのASI183MC Proなど)。そうなると、従来よりも焦点距離が短く高精細な鏡筒(レンズ)が必要になってくる。
ACL200は普通の200mm F4レンズとして捉えるとやや高価だが、上記のことを考えると、その価値はあると考えて購入した。
星像についてはWEB上に既にいくつか作例が掲載されており、それらを見るとフルサイズの四隅まで良好のようだ。しかし個体差や組み立て不良、マウントアダプタやカメラとの相性も考えられるため、一応、今回のACL200+EOS60Daの組み合わせで実写テストを行った。バルコニーのSE2赤道儀には現在惑星観測用のミューロン180Cが載っており、晴れたら遠ざかりつつある火星を撮る態勢なので使えない。そこでポラリエに載せてバルコニーに出し、極軸を適当に北へ向けてISO3200で5秒露出した。
露出が短いため星の数が少ないが、APS-C(x1.6)では四隅まで点像であることがわかる。ハロも出ていない。
ピント合わせは粗動である程度合わせた後、微動の方で厳密に合わせた。この微動ピントリングは最後の追い込みになかなか便利で、ストッパーネジもついている。粗動の方はストッパーネジが無いが、動きにある程度の重みがあるので、不用意に動くことは無さそう。基本的に無限遠しか使わないのなら、粗動の方はテープで止めてしまっても良いと思う。
コメント
はじめまして
このレンズちょっと気になります
写真で見るとコーティングの様子がわからないし
スペックに何も書かれていないのですが
どんな感じでしょうか?
馬頭あたりでゴーストの影響など見ていただけると
非常にありがたいです・
Tezさん、こんにちは。
ゴーストについては気になっていたのですが、今のところWEB上には情報がないので、見切り発車でとりあえず購入しました。
今、火星の撮影を優先してやっていて、こちらの検証は後回しになっている状況ですが、時間があれば輝星を入れてゴースト確認をしてみます。
お返事ありがとうございます。
よろしくお願いします。
Tezさん
下記で検証しました。
https://asbalcony.com/20201115-askar-acl200-ghost/
フィルター無しだと、目立つゴーストの発生はありませんでした。
カメラとの間に2枚の平面フィルターを入れると輝星周りにゴーストが出ましたが、これを許容できるかどうかは、個人差があるかと思います(私はこの程度はOKです)。