ZWO ASI482MCとMeike 6.5mm F2.0による星空動画撮影の試行

経緯

現在、自宅で赤道儀を用いた直焦点撮影をする場合、機材一式はバルコニーに置いたノートパソコンに繋ぎ、それに自室のデスクトップパソコンからリモート接続して操作している。いまのところピント合わせは手動なのでバルコニーに出なければならないが、それ以外はリモートで行っているため、雲の襲来や航空機・人工衛星など空の状態が分からないことが多い。そのため、超広角レンズに何かカメラを付けて空の状態を見たいという考えがあった。また、流星群の極大日に遠征できない(無理して出かけるほどでもない)場合、自宅から明るめの流星狙いで動画撮影もしたかった。

本格的に動画撮影するならば、今の定番はSonyのα7Sシリーズということになっているようだが、こんな気軽な動機では新品のα7SIIIなどはとても買えない。中古では安くてもα7Sで10万円、α7SIIで16万円程度といった相場で、これも星景や動画をメインの趣味としてガッツリと取り組むのでなければちょっと手が出ない。それに高価なフルサイズ対応のレンズも必要になる。

そこで、天体用の小型CMOSカメラにCマウントレンズでも付けてみるかと思っていたが、タイミング良くZWOからセンサーのピクセルサイズが5.8μmと大きめの非冷却モデル「ASI482MC」が発売された。解像度も1920×1080と動画向けだし、センサーサイズについても1/1.2インチと大きめ。ほとんど直感で購入を決めた。

センサーサイズ(1/1.2インチ)からしてCマウントレンズでは対応レンズが少なくて入手しづらいので、マイクロフォーサーズ(MFT)レンズを使うことにした。ちょうどZWO純正のMFTマウントアダプタも販売されていたので、ASI482MCに適合することを確認した上で購入した。

肝心のレンズについては、当初「NOKTON 10.5mm F0.95」を候補にしたが、これも11万円前後と高価なので、今後の使用頻度が不明な段階で購入するのはためらわれた。それに焦点距離10.5mmは1/1.2インチセンサーではフルサイズ換算で35mmぐらいの画角になってしまい、ちょっと狭い。

そこで「とりあえず試してみる用」として、安価で明るく広い画角の「Meike 6.5mm F2.0 Fisheye」を購入した。各家電量販店の通販で約1万7千円弱で購入できる。

機材詳細

到着したカメラ「ASI482MC」と「Meike 6.5mm F2.0 Fisheye」を並べてみた。

ZWO ASI482MC と Meike 6.5mm F2.0 Fisheye
ZWO ASI482MC と Meike 6.5mm F2.0 Fisheye(箱にはAPS-Cと書かれているが、購入したのはマイクロフォーサーズマウント仕様)

ASI482MCはこれまでのZWOの非冷却惑星用カメラとほぼ同じ程度のサイズで小さい。これにはZWO純正のMFTマウントアダプタを付けた。Meike 6.5mmの方も思っていたより小さかったが、しっかりした作りになっており、国産入門デジイチのキットレンズのような「スカスカ感」は無い。ただしなぜか絞りリングにクリックがなく連続的に絞りが変化する。使用中にうっかり動かさないように注意が必要。また絞って使う場合にも、例えばF2.8などの目盛り表記がないため再現性に難有りと思う。

両者を接続して自由雲台付きの三脚に載せてみた。

自由雲台に載せたZWO ASI482MC と Meike 6.5mm F2.0 Fisheye
自由雲台に載せたZWO ASI482MC と Meike 6.5mm F2.0 Fisheye

カメラとレンズの外径がほぼ同じなので統一感がある。機材到着前にはレンズを保持する器具がいるかと思ったが、これならカメラ底面の三脚ネジ穴だけの保持で大丈夫そう。

ひとつ誤算だったのは、IR/UVカットフィルターが装着できなかったこと。当初の計画では、1.25インチのIR/UVカットフィルターを、ZWOの「T2-1.25″ Filter adapter」に付けて、MFTマウント内のT2ネジにはめ込むつもりだった(このアダプターは、ASI294MC Proを購入したときに付属してきて、余っていた)。しかし実際にやってみると、フィルターをレンズ側に付けるとレンズの後玉部の突起と干渉し、カメラ側へ付けてもカメラと干渉する。

1.25インチIR/UVカットフィルターの装着ができず
1.25インチIR/UVカットフィルターの装着ができず

これについてはひとまず断念した。しかしIR/UVカットフィルターが無いと色合いが変になるため、後日枠無しのフィルターを購入して、カメラに直接貼り付けるなどして対処したい(T2延長筒を入れる手段もあるが、ピントが合うかどうかわからない)。

その他、ついでに「EOS-M4/3マウントアダプター」も購入したので、所有しているキャノンEFマウント(EOSマウント)レンズ群や、EOSマウントで統一している各鏡筒にも接続できる。

EOS-M4/3アダプター を介してEOSマウントレンズ(タムロンA16)を装着
EOS-M4/3アダプター を介してEOSマウントレンズ(タムロンA16)を装着

静止画の確認

まず開放F2.0での星像を確認するため、Sharpcap(4.0.8185)のライブスタックで1分弱の露光を行った。ただしこの日は空全体が薄雲に覆われており、満月過ぎの大きな月が輝いて雲を照らし、更にSQM17~18程度の光害もあるという最悪の状態。肉眼では1等星ぐらいしか見えない。逆に言えば、このような悪条件でどの程度星が確認できるかの検証にもなる。

ライブスタック・ ゲイン100, 4sec. x 14 (56sec.)、絞り開放F2.0
ASI482MC, Meike 6.5mm F2.0開放、三脚固定・ライブスタック・ ゲイン100, 4sec. x 14 (56sec.)
  • FITS出力をステライメージ9でデジタル現像、Photoshopで強調処理

このレンズは円周魚眼レンズ(Fisheye)だが、元々APS-C用に作られたものであり、APS-Cセンサーで円周が収まるようになっている。それをマウントだけMFTにしているので、MFTセンサーでは上下が若干切れるそうだ。ASI482MCは更に小さい1/1.2インチセンサーなので、中央部付近だけを切り出した形になり、単に「歪曲収差を補正していない広角レンズ」となる。

真ん中の良いところを切り出しているためか、F2.0開放でも星像はそこそこ良好。左上は月明と薄雲、右下は街明かりで星が消えてしまっているが、まともな空なら結構使える感じだと思う。よく見ると、左下の1番明るい星(木星)の形が歪んでいるのが分かるが、この程度は許容範囲。周辺減光については、これだけムラのある空の状態なのでよくわからない。

このレンズの元々の対象であるAPS-Cでの周辺部はどうなのかわからないが、1インチ前後の小サイズセンサーで広角撮影するには、値段的にも手頃な感じがある。

動画の確認

次は同じSharpcap(4.0.8185)で動画撮影。元々こちらが主目的。

流星の動画撮影はしたことがないのでよく分からないが、フレームレートは15FPSぐらい要るのではないだろうか、ということで、露出時間を1/15secとして、ゲインは動画としてギリギリ容認できるぐらいまで上げることにした。Sharpcap上でディスプレイストレッチを調整しながら許容できる最大ゲインを探ったが、星を多く出そうとするとどうしてもノイズが目立ってしまう。とりあえずノイズは多めだが、400とした。

キャプチャした動画はAviUtlで強調処理をして、MP4に変換してYouTubeにアップロードした。

ASI482MC, Meike 6.5mm F2.0開放, Gain=400, 露出66.7ms, 15FPS

YouTubeにアップロードした時点でかなり画質が落ちてしまって残念だが、はくちょう座の十字や、こと座のひし形、いるか座の頭はなんとか確認できるので、3等星ぐらいまでは写っている。今回はかなりの悪条件下なので、最初の試行としてはまずまずといったところ。星が目立たないので、もしかしたら弱いソフト系のフィルターを入れたほうが良いかも。

Neat Videoなどの動画のノイズ低減処理ソフト使用も考えてみたい。

1番の大きな問題は、流星群の際にこのFPSで大量の動画を撮影した後、どうやって流星が流れた部分を検出して切り出すかというところ。

撮影した時間と同じだけの時間をかけて見続けるのは非現実的だし、いまのところ思いつくのは、星の日周運動が軌跡を引くような比較明の動画を作って、流星の流れた時刻を特定するぐらい。これが出来るのは、私が知る限りSiriusCompぐらいだが、これは読み込みが静止画なので、動画を一旦コマごとの静止画に書き出す必要がある。15FPSだと1時間あたり54000コマになり、かなり大変そう。ステライメージあたりが動画の流星検出機能を作ってくれたら助かる。


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