購入の経緯
今年の夏に老朽化したノートPC「Lenovo Yoga710」を置き換えるために「HP Pavilion Aero 13」(以後、Aero13とする)を購入し、ほぼ満足して使っていたが、最近は同時に複数の機材で撮影する機会も増えてきたため、ノートPCが1つでは賄えなくなってきた。Aero13はかなり高性能なので同時に2つや3つのカメラとソフトを動かすことは可能と思うが、何らかの事情で再起動したり、外付けDISKやUSBを差し替えることがあるため、やはり物理的に2台に分けたい。ただ、Yoga710はさすがに古すぎて能力不足。
そこで、Aero13ほど高性能でなくていいので、そこそこ使えて価格が安めのノートPCをもう1台調達することにした。サブ機として使うのでCPUは物理4コア程度で良いし、外に持ち出すことも無いので重量は重めでも良い。ほとんどリモート制御するので、キーボードや画面の質にもこだわらない。ただしUSB機器を色々つなぐので、USBコネクタは3つほしい。そのような感じで色々検討した結果、Lenovo IdeaPad Slim 550i 14型(以後、Slim550iとする)に決定した。画面サイズは14型で、重量は1.45Kgとモバイルノートに比べると重め。
CPUはインテルCore i5-1135G7だが、実はIdeaPad Slim 550にはAMD Ryzenを用いたシリーズ(iのつかないモデル)もあり、そちらのほうが価格対性能比が良いという評判。しかし中位機種であるRyzen5500Uの仕様が購入を検討した10月下旬の時点で納期が見通せなかったため、即納のインテル機の方にした。AMD機の方を待っても良かったが、現時点ではデスクトップ機もメインのノート(Aero13)も共にAMD機のため、たまにはインテル機を導入しても良いかと思った。
外観・サイズ・キーボード
サイズはA4サイズの紙やAero13より一回り大きい。重量は見た目の差以上にあり、カバンに入れて電車や徒歩で持ち歩くのはキツそうだが、ずっしりとして剛性が高めの安心感がある。
ACアダプターも大きめだと思う。Aero13もそうだが、旅行などに持ち出して使う場合には別途PD対応のUSB充電器を買ったほうが良さそうだ(Slim550iもAero13もUSB PD充電に対応している)。
USBの口は全て3.0対応で、Type-Cが1ヶ所、Type-Aが2ヶ所。
色は渋めのグレー(プラチナグレー)で高級感がある。値段的にはAero13よりかなり安いが、Slim550iのほうが高そうな雰囲気がある。
開き方は普通のノートPCと同じで、180度までは開かないし、裏返しにも出来ない。。キーボードについては、まだあまり使っていないのでよくわからない。少し使ってみた感じでは特に違和感なく使えたので普通だと思う。リモートで使うことが多く、このキーボードで多量の文章などを打つことも無いので、あまりこだわりはない。
なお、Aero13と同じくキー照明がある(Fn + スペースキーで点灯/消灯)。これは暗いところで使う天体用としてはありがたい。
画面(ディスプレイ)
ディスプレイは「14インチ・IPS非光沢・1920×1080」となっている。
実は、開封してホコリが入る前にすかさず液晶保護シートを貼ったのだが、うっかりしていて、光沢有りのテカテカのシートを購入してしまって、それに気づかずに貼ってしまった。せっかくの非光沢画面が台無しだが、気泡なくきれいに貼れたし、また買い直すのも勿体ない。リモートで使うことが多く、長時間この画面を眺めることは無いだろうということで、そのままにしている。
黒い壁紙にして液晶輝度を最大にしてみたが、気になるバックライト光漏れもなく、また画素欠陥もない(もしくは気づかない)。特に問題無さそうだ。SharpCapで星空を写してみたが、特に問題なく星を認識できた。
Wi-Fi
IdeaPad Slim550シリーズで、AMD機はWi-Fi 6対応なのだが、インテル機の550iは非対応でWi-Fi 5になる。ここがちょっと残念なところ。
ただ、Aero13のような「Wi-Fiの掴みの悪さ」は無く、他のスマホなどと同じ程度の目盛りレベルになった。これも問題無さそう。
騒音
ここから、騒音測定やベンチマークはAero13購入時と同様に進めることにした。比較のためのAero13とデスクトップ機のデータは前回のものを流用し、今回再測定はしていない。
測定器はメーカー不明の安価な中国製騒音計で、A特性の測定レンジが30dBA~130dBA(±1.5dBA)のもの。そのため30dBA以下は不正確になる。環境は室温24℃でエアコンはOFF。今回の室内騒音は約29dBA。前回(Aero13とデスクトップ機)の測定時は28dBAだったので、1dBAぐらいの誤差がある。
測定対象は、本機(Slim550i)と、Aero13、および2年前に作ったデスクトップPC(Ryzen3700X)の3台。デスクトップPCは静音を意識してセミファンレス電源とNoctuaの各種ファンで固めている。また、ストレージは3機とも全てSSDで無音。音の発生源はファンのみとなる。
測定位置は、ノートPCがスペースキーから斜め45°上方手前に30cmの位置(おおむね使用時の耳の位置)、デスクトップは筐体全面から30cmの位置。
「動画再生時」はYouTubeのFull HD動画を音声OFFで連続5分再生した時、「高負荷時」はCinebench R23のMulti実行開始5分後の測定。電源プランは3機とも「バランス」。
音圧レベル [dBA] | Aero13 | Slim550i | デスクトップ |
アイドル時 | 28(無音) | 29(無音) | 28(無音) |
動画再生時 | 29 | 29 | 28(無音) |
高負荷時 | 35 | 34 | 34 |
アイドル時には3機ともファンが停止しており無音。
動画再生時には、Aero13とSlim550iはファンが回転を始めて若干の音が発生した。ただし音声をONにすれば分からなくなる程度で気にならない。デスクトップ機は動画再生程度ではファンが停止したまま。2つのノートは同じ29dBAだが、音の質としてはSlim550iの方が低めの音で目立ちにくい。
高負荷時は3機ともファン回転音が同程度の34~35dBAになった(騒音計をキーボード上の10~20cm程度まで近づけると40dBAを超えるが、使用中にそんな位置まで耳が寄ることもないと思う)。数値としては同じ程度だが、音の質としてはAero13が他の2機よりもやや高めの周波数で、少し目立つ。Slim550iは低い周波数で落ち着いた音。両者とも作業の邪魔になるほどの大きな音にはならないし、深夜のバルコニーで高負荷で運用しても近所迷惑にはならない。
CPU(APU)とメモリの詳細
CPU-Zで見たCPUの詳細は下図。
Core i5-1135G7は第11世代のグラフィックスを統合型モバイル向けCPU(Tiger Lake-U)で、4コア/8スレッド。
同じくCPU-Zで見たメモリの状況は下図。
メモリはDDR4-3200のデュアルチャネル。容量は8GB。出来れば16GB欲しいところだったが、16GBモデルは納期が長期な上に、さらに価格が上がるために妥協した。またメモリはオンボードなので増設できない。8GBなら余裕が十分あるとは言えないが、通常は問題ないと思う。
SSD
ストレージは、512GB SSD (PCIe NVMe M.2)。CrystalDiskInfoによれば型番は「MZALQ512HBLU-00BL2」で、これはSAMSUNG製。
CrystalDiskMarkの結果は下図。
どうもWriteの結果が低めのように思う。
下はAero13の結果だが、Slim550iのほうが悪い。
まあ、サブ機としての実用上は問題無さそうではある。この辺りは安価な機種として妥協するべきところか。
Cinebench R23
Cinebench R23の比較を行った。
室温はSlim550iは24℃で他の2機種は27℃。電源の設定は3機とも「バランス」(ACアダプタ接続)。ベンチマークは高パフォーマンスで行うべきかもしれないが、通常は「バランス」か「省電力」で使うため、それに沿った設定にした。
Cinebench R23 | Aero13 | Slim550i | デスクトップ |
CPU/APU | Ryzen5800U Zen3(Cezanne) 8コア16スレッド TDP 15W | Core i5-1135G7 Tiger Lake-U 4コア8スレッド TDP 28W | Ryzen3700X Zen2(Matisse) 8コア16スレッド TDP 65W |
メモリ | DDR4-3200 16GB デュアルチャネル | DDR4-3200 8GB デュアルチャネル | DDR4-3200 64GB デュアルチャネル |
グラフィック | APU内蔵(Vega) | CPU内蔵 (インテル Iris Xeグラフィックス) | GeForce GT1030 |
SSD | 512GB SSD (NVMe M.2) Micron MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA | 512GB SSD (NVMe M.2) SAMSUNG MZALQ512HBLU-00BL2 | 1TB SSD (NVMe M.2) Intel 760p SSDPEKKW010T8X1 |
Multi | 8368 | 5260 | 11420 |
Single | 1380 | 1276 | 1239 |
MP Ratio | 6.06 | 4.12 | 9.22 |
Slim550iは、マルチでは他の8コア機に及ばないが、シングルでは同等程度。これを見ると、8コアのAero13のマルチが本来よりも低めに見える。これはTDPを15Wに抑えている為?
PassMark 10.1
PerformanceTest 10.1 (PassMark)も実施。室温と電源の設定はCinebenchと同じ。
Cinebench R23 | Aero13 | Slim550i | デスクトップ |
CPU/APU | Ryzen5800U Zen3(Cezanne) 8コア16スレッド TDP 15W | Core i5-1135G7 Tiger Lake-U 4コア8スレッド TDP 28W | Ryzen3700X Zen2(Matisse) 8コア16スレッド TDP 65W |
メモリ | DDR4-3200 16GB デュアルチャネル | DDR4-3200 8GB デュアルチャネル | DDR4-3200 64GB デュアルチャネル |
グラフィック | APU内蔵(Vega) | CPU内蔵 (インテル Iris Xeグラフィックス) | GeForce GT1030 |
SSD | 512GB SSD QLC (NVMe M.2) MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA | 512GB SSD (NVMe M.2) SAMSUNG MZALQ512HBLU-00BL2 | 1TB SSD TLC (NVMe M.2) 760p SSDPEKKW010T8X1 |
PassMark Rating | 5177 | 2908 | 5074 |
CPU Mark | 19341 | 11062 | 22917 |
2D Graphics Mark | 780 | 300 | 587 |
3D Graphics Mark | 2452 | 2442 | 2888 |
Memory Mark | 2506 | 2450 | 3323 |
Disk Mark | 13838 | 11777 | 19165 |
CPUの能力は8コア機の半分程度。メモリやグラフィック、ディスク性能もやや低め。これは安価な4コア機として妥当な結果と思う。
まとめ
【良いところ】
・4コア中堅機として実用上十分な性能。
・メモリがデュアルチャネル。
・フルパワー時でも許容できる騒音(距離30cmで34dBA)。
・安価(Core i5、8GBメモリ、512GB SSD、4年引き取り保証をつけて7万円台)
【気がかりなところ】
・SSDのWrite性能が低め
【妥協したところ】
・徒歩で持ち運ぶには重い(1.45Kg)。
・Wi-Fi 6未対応(Wi-Fi 5)。
・同シリーズのAMD Ryzen機に比べてCPU性能が低い。
・メモリが8GBで増設できない。
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