コレクターPHの導入と、48mmフィルターによる周辺減光(その3)

前回の続き。

これまでの経緯

R200SS用にコレクターPHを買ったものの、所有する天体用フィルター径がほとんど48mmのため、コレクターPHの筒先(52mm)に52mm->48mmステップダウンリングを介して取り付けた。そうするとAPS-Cでも周辺減光がかなり増加してしまい困った。

そこでフィルターをコレクターPHの後ろ側(カメラ側)につけるべく、「M56フィルター変換アダプター48/52」を購入したが、実はこのアダプターはコレクターPHとの併用は不可だった(購入前に気が付かなかった)。

色々試行錯誤していると、ビクセン製Tリングの後ろ側(カメラ側)に48mmフィルターをねじ込めることが分かった。マウント側にフィルターが突き出すのでEOSカメラには装着できないが、マウントアダプターを介して富士X-E2とZWOカメラには接続できた。

ただし、フィルターを裏向きに取り付けることになるため、何らかの不具合が起こらないか懸念される。例えばゴーストの発生など。

今回試したこと

月齢12.2の明るい月が出ていたが快晴なので試写は出来そうだった。そこで、先日の「48mmフィルターをTリング後部に裏向きにつける」方法で、フィルターを変えてみて実写テストした。

Tリングの後ろにフィルターを裏向きにねじ込んだところ
Tリングの後ろにフィルターを裏向きにねじ込んだところ

今回は特にゴーストの発生が気になったので、輝星(オリオン座・アルニタク)によるゴーストが発生しやすい「馬頭星雲と燃える木」付近を撮影した。試してみたのは下記の通り。

  • ①フィルター無し(60sec)
  • ②カメラレンズ用プロテクター(60sec)
  • ③ZWO IRカットフィルター(60sec)
  • ④Quad BPフィルター(180sec)
  • ⑤Comet BPフィルター(180sec)

カメラはZWO ASI294MC Pro。これはフォーサーズなので、周辺減光の影響はAPS-Cよりも少ないはず。ゲインは200で統一したが、フィルターによって露出時間を変えている(カッコ内の数字が秒数)。

撮影したFITSファイルをASIFitsViewでストレッチ表示してJPEGに変換し、25%に縮小した。

フィルター無し
フィルター無し:ゴースト無し
カメラレンズ用プロテクター
カメラレンズ用プロテクター:ゴースト無し
ZWO IRカットフィルター
ZWO IRカットフィルター:ゴーストが弱く発生(画面左上の領域)
Quad BPフィルター
Quad BPフィルター:ゴーストが強く発生(画面左上の領域)
Comet BPフィルター
Comet BPフィルター:ゴーストが強く発生(画面左上の領域)

案の定、素通しとプロテクター以外ではゴーストが発生してしまった。特にQurd BPとComet BPでは強く発生して、画像処理で誤魔化すのが難しいレベル。この2つのフィルターは光害地である自宅においてはほぼ常用しているので、これは困る。

現段階では、この場所にQuad BP(またはComet BP)を入れること自体が悪いのか、フィルターが裏向きなのが悪いのかの切り分けが出来ない。それを確かめるには、48mmオス-オスのリバースリングが必要になるが、マウント内に収まるサイズのものが見当たらない。

とりあえずこの件は保留。


それでは、Quad BPをコレクターPHの先端に付ければゴーストは発生しないのか。それを確かめるべく、コレクターPHの先端に52mm-48mmステップダウンリングを介してQuad BPフィルターを付けた(下の画像はQuad BPでなくIRカットフィルターを付けた例)。

コレクターPH先端にステップダウンリングを介して48mmフィルターを装着(IRカットフィルターの例)
コレクターPH先端にステップダウンリングを介して48mmフィルターを装着(IRカットフィルターの例)

これは最初考えていた使い方であり、フィルターの正しい向きでの装着となる。その結果が下の画像。

Quad BPフィルターをコレクターPHの先端に装着(ステップダウンリング併用)
Quad BPフィルターをコレクターPHの先端に装着(ステップダウンリング併用):ゴースト無し

この場合ではゴーストの発生は無かった。

この画像を見ると、周辺減光の増加は確認できるものの、センサーサイズが小さめのフォーサーズの為か、周辺減光の具合は前回のAPS-Cの場合よりもマシに思う。これでフラット処理をして、若干トリミングして実用になるのなら、これは有りかもしれない。

そこでこの状態で75コマ撮影し、フラット・ダークも撮影して、PixInsightで基本的な画像処理をしてみた。

フラット・ダーク・75コマ加算平均・ABE・DBE・SPCC・BXT・NXT・STFで自動ストレッチ
フラット・ダーク・75コマ加算平均・ABE・DBE・SPCC・BXT・NXT・STFで自動ストレッチ

とりあえずリニア処理して、単純に自動ストレッチすると、やはり周辺部の減光が大きかった部分の色合いがおかしい。フラットもDBEも使っているが、やはり極端に強調するとどうしても微妙なところで合わないのだと思う。

そういうわけで、今のところ下記のような選択になるようだ。

●輝星のゴーストが問題となる場合:48mmフィルターはコレクターPHの先端にステップダウンを介して付け、撮影する。周辺部の減光が大きくなるので、周辺部の補正が合わない場合はトリミングする。

●輝星のゴーストが問題とならない場合:48mmフィルターはTリングの後端に付ける。


上の馬頭星雲の画像は、その後色々と処理すると何とか見られるようになったが、背景のムラを消すのに手間がかかった。周辺減光の大きな光学系を、背景の明るい光害地で使うと後で苦労する。

馬頭星雲と燃える木
オリオン座の散光星雲、馬頭星雲(IC434)と燃える木(NGC2024)

【環境】2023/11/25 23:42 ~ 11/26 3:57 / 兵庫県明石市/気温 5℃/光害レベル:SQM-L測定値=17.5(月齢20の月明あり))
【光学系】R200SS + コレクターPH(760mm F3.8)/ Quad BPフィルター(コレクターPHの先端にステップダウンリングを介して取り付け)
【カメラ】ASI294MC Pro
【架台・ガイド】ケンコーSE2赤道儀/ガイド鏡:ミニボーグ50+クローズアップレンズNo.2/ガイドカメラ:ASI178MM
【ソフトウェア】<撮影>N.I.N.A 2.2/ <ガイド>PHD2/ <処理>(下記の通り)
【撮影法】センサー温度0℃・ゲイン200・オフセット30・180sec x 75コマ(合計225分)/PHD2によるオートガイド・ディザリングあり
【処理法】
前処理(リニア):PixInsight: WBPP, ABE, DBE, PCC, BlurXTerminator, NoiseXTerminator
後処理(ノンリニア):ステライメージ9・Photoshop
2×2ソフトビニング・トリミングなし


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