先日、EOS 6Dを購入した。
私が持っている一般用のデジタル一眼は、「EOS Kiss X2(無改造)」だけで、一般撮影にはこれを使っていた。天体専用機は「60Da」と「もう一台のKissX2(IDAS改造)」の2台が有り、60Daの方は一応一般撮影も出来そうであるが、花などカラフルな対象を写すと本来の色が出ないなど、やはり無理がある。
唯一の一般機KissX2(無改造)だが、購入してから5年以上が経過して、最近の機種と比べて機能的にも少し古さが目立ち、そろそろ買い換えの時期となっていた。思い起こせば、このブログを始めたきっかけも、このKissX2を購入した事だった。
購入に際しては、EOS6DとEOS70Dで迷ったが、一般向けとはいえ、やはり被写体としては星景・星野が主になることや、EF200mmF2.8L、100mmF2.8Lなどフルサイズ対応のLレンズもあったので、結局、フルサイズで高感度に強いといわれる6Dにした。
現物が到着して、60Daと並べてみた(左が60Da、右が6D)。
6Dはフルサイズ一眼レフとしては小さく、60Daと大きさも重さもほとんど同じで違和感が無い(ボタン類や操作は結構異なる)。
電池(LP-E6)が60Daと共通で、SDカード採用というのも、運用の面で有り難い。
しかし、背面液晶がバリアングルで無いのと、リモート端子がN3形状で、3.5mmジャックのKissや60Daと異なるところが残念。リモコンを買い足す必要があった。
さて、早速ダークノイズ比較を行ってみた。
比較対象は、60Da、Kiss X2(無改造)の2台とした。手順は下記の通り。
- カメラにマウントキャップ、アイピースキャップをして、インターバル15秒で3コマ撮影し、3コマ目を採用。
- (2)RAW(*.CR2)を、Adobe DNG Converter8.2でDNG変換。
- (3)DNGファイルをLightroom4.4で現像、16bit/チャネルのTIFFで保存。
- (4)TIFFをPSCS6で読み込み、レベル補正でハイライトの値を255->50に下げてノイズ強調。
- (5)トリミング無しで400×267(ピクセル)に縮小、およびピクセル等倍で中央部を400×267(ピクセル)切り出し、比較画像作成をしてJPEG出力。
ここで、(2)のDNG変換の手順は本来必要ないはずだが、普段の天体画像処理においては一旦DNG変換して、RAP2またはRStackerでダーク減算・フラット補正処理するため、今回の評価もDNG変換を通しておいた。
また(3)のLightroomの現像パラメータは、基本的にデフォルトのままだが、下記のみ変更した。
- カラーノイズ軽減をゼロ(デフォルトは25)。
- トーンカーブはリニア
- WBは、機種に応じて調整。
WBだが、60Daのフィルター特性が特殊なため、「昼光」で統一すると撮影画像の色がおかしくなる。しかしダーク画像でAWBを用いるのもおかしい。そういうわけで、一旦同じレンズで同じ夜空を撮影し、背景がグレーになるように機種別のWBを決め、その値をダーク画像のWBにした。
これを見ると、6DとKissX2はほぼ同じ値で、60Daは天体用の赤外カットフィルタの特性上、赤カブリするためか、色温度設定が高めになった。
さて、このような手順で、気温14℃の環境下で撮影した。
真夏は砥峰・峰山高原の夜間でも20℃を越えるので、今回の14℃というのは熱ノイズが比較的少なめの環境と言えそうだ。
露出時間と感度は数多く組み合わせるとかなりの手間になるため、私が自分の機材(FLT98+フラットナーレデューサー4、F値が約5.0)での直焦点撮影時の目安としている「ISO800・10分」を基準として、露光量が同じになる「ISO1600・5分」、「ISO3200・2.5分」を追加した。ただし、KissX2のISO3200は無しである(kissX2は感度ISO1600までしかないため)。
まず、トリミング無しで400×267に縮小したダーク画像 (下の画像)。
Kiss X2のノイズは、他の2機種に比べて明らかに多い。
60Daは全体的に青っぽい。WBが青寄りのためだが、撮影結果がグレーになるよう設定したWB値での結果なので、実際の撮影画像でもこうなっているはず。赤のノイズが目立たないので、赤くて淡い散光星雲が赤ノイズに埋もれるのを緩和する効果が有るかも。
6Dは60Daと同等かやや少なめに見えるが、赤色主体なのが気になる。
次は中心部のピクセル等倍切りだし (下の画像)。
kissX2はランダムノイズ、ホットピクセル共に多い。
60Daはホットピクセルが目立たない、均質な印象を受ける。
6Dはランダムノイズは60Daより少なめながら、ホットピクセルがかなり目立つ。実際の撮影でも、60Daはダーク減算(または長秒時NR)をしなくても縮小すればそこそこ使えるが、6Dは縮小しても目立つ輝点がかなりあったのが残念。
また、RAP2の「ダーク評価」機能も用いてみた。これはオリジナルのRAWファイル(CR2)を直接読み込んだ。
下はSigmaとHotPixcelExpをグラフで比較したもの
やはり、6Dは60Daに比べてランダムノイズ(sigma)は少なめながらホットピクセル(HotPixelExp)が多い。ヒストグラムのピークがふたつに分かれていることからも、この傾向が分かる。これはKissX2も同じ。
そういうわけで、この3機種の比較ではざっくりと言って
- ランダムノイズの少なさ: 6D > 60Da > > kiss X2
- ホットピクセルの少なさ: 60Da > 6D >= kiss X2
という感じだ。
ホットピクセルはダーク減算(または長秒時NR)で低減できるが、それでも完璧とはいかない。フルサイズの6Dにはもう少し頑張って欲しかったが、相手がAPS-Cとはいえ(噂では)選別センサーの60Daでは、こんなものかもしれない。また、私の6Dの個体がハズレっぽいのかもしれない。
ここは、選別センサーの「6Da」の登場に期待したい。
さて、今回は露光レベルが同じの3通りの組み合わせ「ISO800・10分」、「ISO1600・5分」、「ISO3200・2.5分」を試したが、ISO感度が高い方がノイズは悪化している。つまり、同じ露光レベルなら低感度で長時間露光した方がS/N比は良さそうだ。
しかしここで注意すべき点は、ISO感度が高い方が露出時間が短いことである。撮影に費やせる時間が限られているとすると、重要なのは「単位時間あたりに稼げるS/N比」なのでで、「ISO800・10分」と比較するのは「ISO1600・5分×2コマ加算平均」であるべきと思う。
露光を短時間で小刻みに出来るメリットは大きいので、この辺りはまた後日検証したい。
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