昨年末の「木星と土星の大接近」は非常に珍しく見応え(撮り応え)のある現象ということで、事前準備をしっかりやろうと思っていた。当初、自宅敷地内からは南西低空の木星と土星は見えないだろうから、近くの公園などに持っていける機材を使おうと思っていた。鏡筒はBORG71FLにするとして、架台の方に困った。スカイメモRやJILVA-170等のポタ赤のセットは赤緯方向が粗動のみで使いにくいし、ポルタ経緯台は手動追尾になってしまう。
そこで、SkyWatcherの自動経緯台「AZ-GTi」に目をつけた。乾電池で動くし、小型のBORGを載せて徒歩で担いで近所へ持ち出せそう。また安価な割に赤道儀化など面白い機能があって、実は以前からかなり興味があったのだが、特にすぐに必要なものではないので購入に踏み切れずにいた。しかし今回「珍しい現象を捉えるため」という都合の良い口実ができたので購入することにした。
ところが、後になって自宅の一角からなんとか南西の低空が見える事が分かり、最接近時にはSE2赤道儀と主砲のミューロン180Cをそこへ移動させて使うことができたため、結局AZ-GTiが活躍する場面がなくなった。
このままではせっかく購入したAZ-GTiが無駄になるため、自宅バルコニーで平日夜などあまり時間をとれないときに「ちょい見、ちょい撮り」するためのお手軽機材に転用することにした。
とりあえず、BORG71FL(レデューサー+ Quad BPフィルター)にASI294MC Proをつけて載せてみた。
これをバルコニーに持ち出し、冷却カメラ用のパソコンを繋いで、馬頭星雲に向けてSharpCapによるライブスタックを行った。
SharpCapはPro版を用いており、事前にダークとフラットを撮影しておいて、リアルタイムで反映させている。しかし星雲が浮かび上がるぐらいまで強調表示すると、背景のムラがかなり目立つ。ゲインは300、 露出は15秒で順次スタックしている。
これを画面で見るだけなら、いわゆる「電視観望」という手法になる。電視観望は他の人がいる場合に色々な天体を見てもらうには良いが、自分だけならやはり画像として残したい。それで180秒毎に一旦ファイルに書き出してスタックをリセットする設定とした。つまり3分露出(ダーク・フラット適用済み)の画像が次々出来ていくことになる。ただし経緯台なので自動追尾するものの、写野は回転していくため、周辺部は切り捨てることになる。また追尾ズレが意外に大きい。15秒露出の間のズレが大きくスタックしても星が流れるファイルが続出した。やはりオートガイドしないと眼視向けレベルの精度のようだ。
星が流れなかった画像ファイルを10コマ(30分)、ステライメージで加算平均して周辺部を切り捨て、Photoshopを併用して仕上げたのが下の画像。
- 【環境】2020/12/31 0:35 – 1:02/兵庫県明石市/気温 未測定/光害レベル:SQM-L測定値=未測定(月齢16の月明有り)
- 【光学系】BORG71FL+レデューサー0.72xDGQ(288mm F4.1)/ Quad BPフィルター
- 【カメラ】ASI294MC Pro
- 【架台・ガイド】AZ-GTi 経緯台モード・恒星時追尾
- 【ソフトウェア】<撮影>SharpCap Pro 3.2/ <ガイド>なし / <処理>(下記の通り)
- 【撮影法】センサー温度0℃・ゲイン300・オフセット30・15sec x 120フレームライブスタック(180秒毎にファイル書き出して10ファイル作成・総露出30分)
- 【処理法】
- SharpCap Proでリアルタイムフラット補正・ダーク減算
- ステライメージ9で加算平均, Photoshop CCで調整
- 3×3ソフトビニング、トリミングあり
SQMは未測定だが、月齢16のほぼ満月が天頂に輝いている状況だった。それで光害地における30分露出の「ちょい撮り」としては、まずます写っていると思う。これはQuad BPフィルターの効果が大きい。
ただし、冷却CMOSを使うためにパソコンを持ち出し、色々配線を繋いで準備している時点で、実はあまり「お手軽」ではなかった。経緯台モードでも正確に追尾するためには水平出しと初期の北向き設置、および最低でもワンスターアライメントは行う必要があるので、赤道儀とあまり手間は変わらない。その上、追尾ズレによる失敗画像が発生するので時間効率は良くない。時間とともに写野が回転するのも不便。
そこで今後、まずは赤道儀化を行い、さらにASIAIRなどを用いてパソコンを使わずに撮像とオートガイドが出来るセットを組んで配線したまま置いておき、バルコニーに出してすぐに使える構成を考えていきたい。
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