今回も天文と関係ない鉄道話。
前回、20年前の2001年に肥薩線を訪れた話を書いた。それで芋づる式に思い出した、国鉄8620形蒸気機関車のこと。
58654号機(熊本)
当時の熊本ではSL列車の「SLあそBOY」と「SL人吉号」が運行されていたが、2001年の訪問時には見ることが出来なかった。
しかし翌年の2002年にも熊本を訪れる機会があり、熊本城や阿蘇山を観光した後、熊本駅で「SLあそBOY」を見ることが出来た。ただ、このときも乗車することは叶わなかった。

牽引機は国鉄8620形蒸気機関車の58654号機。除煙板(デフレクター)の下部を素通しにした、いわゆる「門デフ」がシャープな印象。

8620型の動態保存機は全国で2両あるが、その片方がこの58654号機。1922年に製造され1975年に引退。その後、前回記事で紹介した矢岳駅にある人吉市SL展示館にて静態保存されていたが、1988年に動態へ復活し、SLあそBOY、SL人吉号の牽引機として用いられた。しかし、この画像よりも後の2005年、台枠の歪みや車軸の損傷などの老朽化により運行継続を断念して再引退した。
ところが驚くのはこの後の経緯で、2008年に台枠を新製し再度復活したのである。それまでの部品類も最初の復活時などにほぼ新製していたため、結果として最初の製造時の部品はほとんど残っておらず、ほぼ1988年の復活時以降の部品で構成された、最も新しい蒸気機関車となった。自作パソコンでもよくある事だが、色々部品を交換していった結果すべての部品が入れ替わり、後ろを振り返ると元のパソコンが丸ごとあるという状態(これを「テセウスの船」と言うらしい)。そのため今後も長く活躍できると思われる。
再復活後は2009年から熊本~人吉間を「SL人吉」として運行していたが、昨年(2020年)、令和2年7月豪雨で肥薩線が被災したため、SL人吉の肥薩線運行を休止。ただし、その後も58654号機は2020年11月・12月に「SL鬼滅の刃号」牽引で活躍。今年5月からは土日に「SL人吉」を熊本~鳥栖間で臨時運行している。
コロナ禍がおさまって旅行できるようになったら、九州まで行って、ぜひ臨時運行のSL人吉にぜひ乗ってみたい。
(2022/6/28追記)2022年6月、熊本ー鳥栖間の「SL人吉」を牽引する58654号機を追っかけ撮影した。58654号機を見るのは20年ぶりになる。

詳細は以下の記事
(2023/5/9追記)残念ながら「SL人吉」は2023年度で運行終了の予定。その最終年度に乗車することが出来た。詳細は下の記事。
(2023/5/29追記)2023年5月に撮影のため再訪問した。詳細は下の記事。
78653号機(ウェスパ椿山)
さて、こうして58654号機のことを思い出していたら、なんとなく他の8620形(ハチロク)も日本各地で見かけているような気がした(さすがに一番多く見かけるのはD51形(デゴイチ)のように思うが)。それで古い画像データを調べたところ、他に3両の8620形の画像が出てきた。
一番古い画像は上の58654号機で、次が2016年10月に青森県深浦町の「ウェスパ椿山駅」で見た78653号機。
ウェスパ椿山を訪れたときの記事はこちら
天文活動ほぼ休止中の2016年当時、思いがけず美しい星空を見ることができた良い思い出があるが、残念ながらこのウェスパ椿山は2020年10月に閉鎖してしまった。
そのウェスパ椿山駅の横に静態保存されていたのが78653号機。


五能線では8620形が活躍していたが、この78653号機は五能線で使われていたわけではないようだ。

近くには「ハチロクのお願い」看板があって、動態化について書かれていた。が、一部の文字がテープで隠されていた(おそらく動態保存に関係する部分?)。
ウェスパ椿山には五能線(リゾートしらかみ)に乗って行ったが、沿線の景色が素晴らしかった。そもそも、五能線に乗るのと十二湖を見るために行ったのだが、宿泊したウェスパ椿山も大変良かった。
こうして思い出しながら書いていると、KATOの8620東北仕様を買っておけばよかったと思った(鉄道模型は封印中だけど)。もし九州仕様(門デフ)がKATOから出たら買うかも。
8630号機(京都鉄道博物館)
次は、2018年4月に京都鉄道博物館で見た、8630号機。

こちらは全国で2両の動態保存機のもう一方。博物館構内で運行しているSLスチーム号の牽引機は複数あるようだが、このときはたまたま8630だったようだ。
京都鉄道博物館は2016年にオープンしたが、それ以前はここは「梅小路蒸気機関車館」だった。神戸から日帰りで行けるので、子供の頃から何度も行っている。ただ子供の頃はD51形(デゴイチ)やC62形(シロクニ)などが好きだったので、8620形の記憶はない。デジカメの画像で残っている8630は2016年のこの画像のみ。
この8630は、上述の五能線で走行していた時代もあったようだ。天賞堂から五能線時代の模型が出ているが、門デフが付いている。しかし梅小路時代は上の画像の通りデフなしになっている。
それにしても天賞堂の模型は高い。望遠鏡業界で言えばタカハシのようなもの? でも一生に一回(一両)ぐらいは天賞堂の機関車を買いたいかも。
(2023/7/2追記)2023年6月下旬に京都鉄道博物館を再訪。8630牽引のSLスチーム号に乗車してきた。

詳細は下の記事参照。

68692号機(徳島中央公園)
最後は、2018年11月に所用で行った徳島で、空き時間に散歩で訪れた徳島中央公園内に静態保存されていた68692号機。

プラットホーム上から見ることができるが、各所に鉄網がかけられて、見た目が今ひとつ良くなかった。また、屋根があるものの、塗装が劣化していた。


運転台の窓は鉄格子で塞がれていた。


こうして改めて見てみると、8620形は汽車としての佇まいが美しく思える。もちろん個人の主観だが、C型はD型より動輪が大きく目立ち、その動輪もスポーク式なのでエレガント。それに九州の 58654 号機は、戸籍上は今年で99歳なのに中身は30歳台というチート感も良い。
8620号機(青梅鉄道公園) *2022/6/29追記
当記事を最初に書いてから約1年後の2022年6月、青梅鉄道公園を訪問する機会があり、トップナンバー機の8620号機を見ることが出来た。

デフなしの形態は、上の京都鉄道博物館の8630号機と同じで、少しクラシカルなイメージになる(そもそも、蒸気機関車自体がクラシカルな存在だが)。とても綺麗な状態に保たれていて、運転台に入り運転席に座ることも出来た。

このときは撮影した画像のうち、いくつかを以下のページにまとめた。
58685号機(JR多度津駅前)*2022/10/15追記
2022年10月にJR多度津駅(香川県)駅前の58685号機の展示を見に行った。その時のブログ記事はこちら。


展示場所には屋根があるが、それでも塗装がかなり傷んできている印象。

ナンバープレートはくすんできて、見えにくい状態。
運転台には階段で登れる。中は塗装がボロボロと剥げてきている。

これは、上の2018年頃の徳島(68692号機)よりも状態が悪い感じ。

48696号機(大牟田市動物園)*2023/5/29追記
2023年5月に「SL人吉」撮影のため大牟田を訪問したついでに、大牟田市動物園に展示されている48696号機を見に行った。
事前に下調べのため、WEBで画像検索をしていたが、数年前に比べて現在は明らかに劣化している。


詳細は下記記事参照。
78675号機(五條市史跡公園)*2023/11/9追記
2023/11/3に奈良県五條市を訪れた際に、五條市史跡公園に静態保存されている78675号機を見に立ち寄った。この78675号機には「SL金剛・ハロー号」という愛称が付けられている。
設置されたのが1972年なので、もう51年も経過しているが、塗装がきれいで掃除も良く行き届いており、全体的に良好な保存状態。地元で大切にされているのが良く分かる。


なお、詳細と動画については下の記事参照。

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