系外銀河向け光害カットフィルターの検討

最近は遠征に行くことも少なくなり、特に冬期は専ら自宅でカラー冷却CMOSとワンショットナローバンドフィルター(Quad BP)の組み合わせで散光星雲を中心に撮影している。

ワンショット・ナローバンドフィルターは高価なので今のところQuad BPしか所有していないが、輝線星雲、惑星状星雲、超新星残骸に対しては効果的であり、光害地の自宅でもそこそこ満足度の高い画像が撮影できる。また月明によるカブリが少ないので、月夜でも撮影活動できる。

散光星雲(バラ星雲)でのフィルター比較はこちら。同じ露出時間なら明らかにQuad BP使用がベストであることがわかった。

しかし春の系外銀河の季節になると、小口径で撮影できる散光星雲がほとんど無くなってしまう。それで仕方なく大型の系外銀河やマルカリアンなどの銀河の集団を撮影してきたが、その際のフィルターは惰性でQuad BPを付けていた。

ところが昨年、Quad BPで撮影したM31(アンドロメダ大銀河)の画像があまり思わしくなく、むしろノーフィルターかブロードバンドフィルターのほうが良いのではないかと思うようになった。

そこで今回、手持ちの光害カットフィルターを小型の系外銀河で比較してみることにした。

撮影対象は、しし座の後ろ足の先付近(コップ座の近く)にあるNGC3521(光度8.8等・視直径9.5’)。FLT98CFの対象としては小さすぎるが、このクラス(9等前後、視直径5’~10’程度)がなんとか写れば、春の系外銀河の撮影対象も格段に増える。毎年毎年、しし座のトリオとか、マルカリアン、黒目、ソンブレロ、子持ち・・、では飽きてくる。

フィルターはQuad BPと昔から使っているLPS-P2、最近入手した廉価なSVBONY CLSである。これらは全て2インチ。LPR-Nも所持しているが、これはEOS用マウント内部用のFFフィルターなので今回は使用できなかった。

  • 2020/2/24 1:00 – 1:49/兵庫県明石市/気温 3℃/光害レベル:SQM-L測定値=18.9 (月明なし)
  • 【光学系】FLT98CF 直焦点(618mm F6.3 )
    • 比較するフィルターは、接眼部に差し込む2インチスリーブ先端に装着。
  • 【カメラ】ASI294MC Pro (カメラマウントにZWO IR/UVカットフィルター装着。つまり比較するフィルターと2枚重ねになる。)
  • 【架台・ガイド】ケンコーSE2赤道儀/D=50mm F4ガイド鏡/Lodestar Autoguider
  • 【ソフトウェア】<撮影>APT3.82/ <ガイド>PHD2
  • 【撮影法】センサー温度0℃・ゲイン300
    • No filter: 30sec. x 12
    • LPS-P2: 60sec. x 6
    • SVBONY CLS: 90sec. x 4
    • Quad BP: 180sec. x 2
  • 【処理法】全てステライメージで処理
    • ダークとフラット処理は無し。
    • デベイヤー、オートストレッチ。
    • トータル露光時間が360sec.になる枚数を加算平均。
    • 背景の色、輝度、銀河中心の輝度などが同程度になるよう調整。
    • 2×2ソフトビニング後、デジタル現像。
    • 300×300の範囲を切り出し。

まず基本的な考え方として「同じ撮影時間に得られる結果」の品質比較をするということで、全て合計360sec.に揃えた。各フィルターの露光倍数は異なるため、加算枚数も異なる。

また、ピクセル等倍ではピント合わせやガイドズレなどによる差が目立つので、2×2ソフトビニングした。

結果は下記画像。

光害カットフィルター比較
光害カットフィルター比較

これをみると、Quad BPは加算枚数が少なくノイズが目立つ。これについては枚数を稼ぐと他との差が縮まるのかもしれないが、大変効率が悪い。系外銀河の中のHα領域を狙うのでなければ、Quad BPで時間を掛けるのは無駄な気がする。

LPS-P2とSVBONY CLSは同じような感じ。銀河の淡いところはSVBONYのほうがわずかに良さそう(LPS-P2のほうが細かなディテールが出ているのは、恒星のボケ具合から考えて、ピント合わせとガイドの影響だと思われる)。ただし色はLPS-P2のほうが自然。

ノーフィルターは意外と悪くないが、加算枚数が大変なことになりそう。これなら、SharpCapでLive Stackingしたほうが良いかも。

結局、Quad BPはあまり良くなさそうだ。系外銀河や球状・散開星団は要するに太陽の集団なのだから、光害カットはなかなか難しいということだろうか。

今回使用したLPS-P2などのブロードバンドフィルターを、周囲の光害の種類に合わせて選ぶしかなさそうだが、最近この手のフィルターはかなりの種類が市販されるようになってきており、全てを試すのは難しい。

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