【モバイルノートPC】HP Pavilion Aero 13

購入の経緯

現在、赤道儀制御や天体撮影に使用しているパソコンは天体専用というわけではなく、他の用途も兼ねたモバイルノート型の「Lenovo Yoga710」を用いている。これは約4年半前、それまで持ち運び用に使っていた「Gateway EC1400-41R」の置き換えとして購入した。Yoga710は11.6型で重量が1.04Kgと軽量、SSD&ファンレスなので無音、当時としてはそこそこ速いCore i5プロセッサで、3年間アクシデント保証をつけて税込み9万5千円程度と安かった(本体だけなら7万5千円ぐらいだったと思う)。

Yoga710は結構気に入っていて、どこにでも持ち運んで活用してきたが、最近は天体撮影時に撮影ソフトや星図ソフト、赤道儀制御、リモート接続、ファイル転送など多くのアプリが同時に動くため、動きの鈍さが感じられるようになってきた。天体用途以外にも重い処理のアプリが増えてきたし、もう5年前の機種なのでそろそろ買い替えを考えていた。

後継機を色々検討していたが、モバイルノートで10万円前後の安価なものはどれも重量が1.2Kg程度以上が多く、これまでYoga710の軽さに慣れていると少々つらい。そうして悩んでいたところ、957gと軽く、性能の良いZen3世代Ryzen5800Uを搭載した「HP Pavilion Aero 13」が7月半ばに販売開始となったので、発売開始2日目にすぐ購入し、先日到着した。購入したのは最上位のパフォーマンスモデル(Windows10 Pro, Ryzen5800U, 512GBSSD, メモリ16GB)。色はセラミックホワイト。白は汚れが目立つのでシルバーが欲しかったが、現時点ではホワイトしか無かったので妥協した。

詳細スペックはこちら

外観・サイズ・キーボード

サイズはA4サイズの紙とほぼ同じでYoga710より一回り大きめ。重量は計測していないが、おそらくスペック通り(957g)と思う。持った感じもYoga710とほぼ変わらない。

HP Pavilion Aero 13
HP Pavilion Aero 13 サイズ

色も光沢が少なくて落ち着いた白なので、心配していた「テカテカして浮いた白」という感じではなく一安心。

HP Pavilion Aero 13
HP Pavilion Aero 13 キーボード

開き方は普通のノートPCと同じで、見たところ130°~140°ぐらいまでしか開かない。Yogaのように180°(平坦)や360°(裏返してタブレットモード)にはならないし、画面タッチ機能もない。

キーボードは右端に「delete」、「home」、「pg up」などが縦に並んだ特殊なレイアウト。deleteの左に電源ボタンがあるのも要注意。人によってはかなり気になるレイアウトと思うが、私はあまり気にならなかった。このノートPCで文章作成することがあまり無いためかもしれない。薄型ノートなのでキーストロークは短いが、適度な抵抗があって押したことが確実にわかる。キータッチ感も人によって感じ方が大きく異なるのでなんとも言えないが、私としては問題なかった。

そして、キーに照明があるのはありがたい。Yogaで天体撮影中にキーボード入力する必要があるときにはヘッドランプでキーボードを照らしていたが、その必要が無くなりそうだ。ただしキー照明は「F4」キーでOnになるので、最初に暗い状態でF4を押せるのかどうかが問題。また照明の明るさは2段階で変えられるようだ。

HP Pavilion Aero 13
HP Pavilion Aero 13 キーボード照明

画面(ディスプレイ)

ディスプレイは「13.3インチワイド・WUXGA非光沢・IPSディスプレイ (1920×1200 / 最大1677万色)」となっている。最もありがたいのは、縦の解像度が1200ピクセルあること。つまりよくある「16:9(1920×1080)」ではなく「16:10」となっている。この違いは数字上小さいようみえるが体感的には大きい。自室のデスクトップPCでも、会社でも可能な限り16:10のディスプレイを選定している。

開封してすぐ、ホコリが入る前に液晶保護シートを貼ったので画面の光沢具合はわからないが、非光沢とのことなのでビジネス向きと思う。視野角はIPS液晶のおかげか、かなり斜めから見ても十分良好。

ただし気になったのは、黒い背景にしたときの液晶バックライトの光漏れ。

HP Pavilion Aero 13
左片の下部にバックライト光漏れ

普段の使用ではわかりにくいが、夜間使用でアプリの配色を黒ベースにしたり、黒が多い天体画像を表示したときに目立つので、かなり気になるレベル。暗いシーンが多い動画でも目立つと思う(サポートに交換可能かどうか聞いてみることにする)。

2021/8/1 追記:HPサポートに連絡したら、初期不良として交換するとのこと。現在交換を待っている状況。

2021/8/13 追記:交換品が到着。交換品は光漏れが無く、液晶画面に関する他の不具合もなかった。

Wi-Fi

もうひとつ気になったのは、Wi-Fi電波の掴みの弱さ。もともと自室はWi-Fi親機から通過するドアの枚数が多いためか電波が弱めだが、Wi-FiアイコンでYoga710やスマホが「3/4レベル」なのに本機は「2/4レベル」と一段低い(2.4GHzの場合)。これが5GHzだとYoga710が「2/4レベル」だが、本機は「1/4レベル」またはアクセスポイントを見失う場合もあった。ドライバはWindows Updateで最新の状態になっているはずだが、もう少し様子見する。

騒音

SSD&ファンレスで無音のYoga710に慣れていたため、ファン有り機の騒音は気にかかるところだったので、早速調べてみた。

測定器はメーカー不明の安価な中国製騒音計で、A特性の測定レンジが30dBA~130dBA(±1.5dBA)のもの。そのため30dBA以下は不正確になる。環境は室温27℃でエアコンを最弱で運転しており、室内騒音は28dBA。

測定対象は、本機(Aero13)と、Yoga710、および2年前に作ったデスクトップPC(Ryzen3700X)の3台。デスクトップPCは静音を意識してセミファンレス電源とNoctuaの各種ファンで固めている。また、ストレージは3機とも全てSSDで無音。音の発生源はファンのみとなる。

測定位置は、ノートPCがスペースキーから斜め45°上方手前に30cmの位置(おおむね使用時の耳の位置)、デスクトップは筐体全面から30cmの位置。

「動画再生時」はYoutubeのHD動画を音声OFFで連続5分再生した時、「高負荷時」はCinebench R23のMulti実行開始5分後の測定。電源プランは3機とも「バランス」。

音圧レベル [dBA]Aero13Yoga710デスクトップ
アイドル時28(無音) 28(無音)28(無音)
動画再生時2928(無音) 28(無音)
高負荷時3528(無音)34
騒音比較

アイドル時には3機ともファンが停止しており無音。

動画再生時には、Aero13のファンが回転を始めて若干の音が発生した。音声をONにすれば分からなくなる程度で気にならない。デスクトップ機は動画再生程度ではファンが停止したまま。

高負荷時はAero13のファン回転音がデスクトップ機と同程度の35dBAになった(騒音計をキーボード上の10~20cm程度まで近づけると40dBAを超えるが、使用中にそんな位置まで耳が寄ることもないと思う)。主観だが、Aero13のファンの音はデスクトップ機の径が大きめの静音ファンよりも周波数が高めの音になる。とはいえキンキンした感じはなく、あまり気にせず作業を継続できると思う。

CPU(APU)とメモリの詳細

CPU-Zで見たCPUの詳細は下図。CPUといってもグラフィックス統合型なので正確には「APU」

HP Pavilion Aero 13 / CPU-Z(CPU)
HP Pavilion Aero 13 / CPU-Z(CPU)

Ryzen5800UはZen3世代(Cezanne)のグラフィックスを統合したモバイル向けAPUで、8コア/16スレッドとなっている。重量1Kgを切るモバイルノートに8コアのx86プロセッサが載るというすごい時代になった。

同じくCPU-Zで見たメモリの状況は下図。

HP Pavilion Aero 13 / CPU-Z(Memory)
HP Pavilion Aero 13 / CPU-Z(Memory)

メモリはDDR4-3200のデュアルチャネル。Ryzenはシングルチャネルでは性能が大きく落ちるらしいので、ここがちゃんとデュアルチャネルになっていて一安心。

SSD

ストレージは、512GB SSD (PCIe NVMe M.2)。CrystalDiskInfoによれば型番は「MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA」で、これはMicron製。QLCらしいので、このへんでコストダウンしているのかと思うが、QLCは性能が今ひとつのイメージがある。

とりあえずCrystalDiskMarkを実施。

HP Pavilion Aero 13 / CrystalDiskMark
CrystalDiskMark:HP Pavilion Aero 13 / MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA 512 GB

 今のSSDの速度の相場というものがよくわからないのだが、それほど悪くないのでは、という感じがする。

2年前に組んだデスクトップ機のSSDがインテル製760p 1TB(760p SSDPEKKW010T8X1)で、これは3D TLCだが、その組んだ直後にCrystalDiskMark 6で計測した結果が下の図。

CrystalDiskMark: デスクトップ Ryzen3700X / インテル 760p 1TB(760p SSDPEKKW010T8X1)
CrystalDiskMark: デスクトップRyzen3700X機 / インテル 760p 1TB(760p SSDPEKKW010T8X1)

これをみると、シーケンシャルRead, WriteはTLCに負けるが、部分的に勝っているところもあって、ノートPCなら十分ではという気がする。以前はTLCにしてもMLCに比べて良くないと評判が悪かったが、今やTLCが主流。QLCの評価もそのうち変わってくるのではないか。

Cinebench R23

Cinebench R23の比較を行った。

室温は27℃、電源の設定は3機とも「バランス」(ACアダプタ接続)。ベンチマークは高パフォーマンスで行うべきかもしれないが、通常は「バランス」か「省電力」で使うため、それに沿った設定にした。

Cinebench R23Aero13Yoga710デスクトップ
CPU/APURyzen5800U
Zen3(Cezanne)
8コア16スレッド
TDP 15W
Core i5-7Y54
Kaby Lake-R
2コア4スレッド
TDP 4.5W
Ryzen3700X
Zen2(Matisse)
8コア16スレッド
TDP 65W
メモリDDR4-3200 16GB
デュアルチャネル
PC3-15000 LPDDR3
8GB デュアルチャネル
DDR4-3200 64GB
デュアルチャネル
グラフィックAPU内蔵(Vega)CPU内蔵
(インテルHD グラフィックス 615)
GeForce GT1030
SSD 512GB SSD
(NVMe M.2)
MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA
256GB SSD
(SATA/600)
LITEON CV3-8D256
1TB SSD
(NVMe M.2)
760p SSDPEKKW010T8X1
Multi8368 56611420
Single13804161239
MP Ratio6.061.369.22
Cinebenxh R23 / 室温27℃/電源設定「バランス」(ACアダプタ接続)
Cinebench R23
Cinebench R23 / 室温27℃/電源設定「バランス」 (ACアダプタ接続)

Cinebench R23のシングルではデスクトップ機のRyzen3700Xを超えるスコアとなった。Yoga710からは3倍程度の伸び。

マルチでは同じ8コアのRyzen3700Xに逆転されたが、これまでモバイル用途で使っていたYoga710からは15倍近い伸びとなった。

PassMark 10.1

PerformanceTest 10.1 (PassMark)も実施。室温と電源の設定はCinebenchと同じ。

Cinebench R23Aero13Yoga710デスクトップ
CPU/APURyzen5800U
Zen3(Cezanne)
8コア16スレッド
TDP 15W
Core i5-7Y54
Kaby Lake-R
2コア4スレッド
TDP 4.5W
Ryzen3700X
Zen2(Matisse)
8コア16スレッド
TDP 65W
メモリDDR4-3200 16GB
デュアルチャネル
PC3-15000 LPDDR3
8GB デュアルチャネル
DDR4-3200 64GB
デュアルチャネル
グラフィックAPU内蔵(Vega)CPU内蔵
(インテルHD グラフィックス 615)
GeForce GT1030
SSD 512GB SSD QLC
(NVMe M.2)
MTFDHBA512QFD-1AX1AABHA
256GB SSD
(SATA/600)
LITEON CV3-8D256
1TB SSD TLC
(NVMe M.2)
760p SSDPEKKW010T8X1
PassMark Rating51779365074
CPU Mark19341131522917
2D Graphics Mark780145.9587
3D Graphics Mark24525372888
Memory Mark250615093323
Disk Mark13838384519165
PerformanceTest 10.1 (PassMark) / 室温27℃/電源設定「バランス」(ACアダプタ接続)
PassMark
PerformanceTest 10.1 (PassMark) / 室温27℃/電源設定「バランス」 (ACアダプタ接続)

こうしてみると、2年前にそこそこのスペックで組んだRyzen3700Xデスクトップ機に迫る性能となっており、これまで使っていたYoga710とは桁違いのスコアになった。

なお、グラフィックスについては特に3D処理の必要がないため、デスクトップ機の方も静音性を重視してローエンドのファンレス品を使っているので、3機種とも低い。

まとめ

【良いところ】

・957gという軽さで、デスクトップ8コア機に迫る高性能。

・メモリがデュアルチャネル。

・画面解像度が16:10(1920×1200)。

・フルパワー時でも許容できる騒音(距離30cmで35dBA)。

・そこそこ安価(最上位モデルでも本体税込み・送料込み、価格com限定価格12万円)

【気がかりなところ】

・(個体差かも)画面を黒くした時、液晶バックライトの光漏れが目立つ箇所あり。(2021/8/13:初期不良に認定され交換済み。交換品は光漏れが無く正常)

・(個体差かも)Wi-Fiの電波の掴みが、他のPCやスマホに比べて悪い。

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