ASIAIRによる月の動画撮影とスタック・画像処理

きっかけ

昨年末から年始の休みの間は「BORG71FL+AZ-GTi+ASIAIR Pro+ASI294MC Proの軽量機材セット」を高く持ち上げて、東空のZTF彗星(C/2022 E3)を自宅屋根越しに撮影していた。

年明けごろからは月が大きくなってきたので、明け方のZTF彗星以外にはあまり撮影する対象が無かったのだが、そうなるとむしろ月を撮れば良いんじゃないかと思った。それでこのセットをバラしたくなかったのでこのまま月を撮ってみることにした。ASIAIRで動画撮影とスタックが出来るらしいということは知っていたが、今までやったことが無かったので、この機会に月で試してみた。ASIAIRアプリは8インチのAndroidタブレットを用いた。

導入・撮影

月ではPlateSolvingが動作しなかったので、まず適当に月近くのM45(すばる)を導入・PlateSolvingしたあと、月を自動導入して手動調整で写野中央に入れた。追尾速度も月速度にした(短時間の撮影ではあまり影響ないかと思うが一応)。

カメラはZTF彗星撮影用に画素ピッチ粗めのASI294MC Proだし、望遠鏡はf=288mmの短焦点、さらにComet BPフィルターが入っているので全く月撮影向きではない。フィルターをUV/IRカットに替えてカメラも183MCにするべきだが、脚立に上って交換作業するのが面倒だし、ピントも合わせなおす必要が出てくるのでそのままにした。

撮影はモードをVIDEOにして、写野中央の1280×720でクロッピング。ゲインは120で露出時間ははっきり覚えていないが1ms~2ms程度にしたと思う。ファイルの種類はAVI。それで撮影ボタンを押すと簡単に動画で撮影できた。

ASIAIR Proによる月の動画撮影
ASIAIR Proによる月の動画撮影

fpsは30~40程度で2分間撮影したので、撮影フレーム数は3600~4800程度になったと思う。

スタック

いつもなら撮影済み動画ファイルはパソコンでスタック処理するが、今回はそのままASIAIRでのスタック処理を実施した。

ASIAIRでのスタック処理はFiles Managerの中にあるので。その中から選ぶ。

スタック処理の種類選択

今回は月なので「Lunar Surface」を選択した。

するとビデオファイルの選択に移るので、今回撮影したAVIファイルを選択(最初の導入時にM45でSlateSolvingしたので、そのためかファイル名にM45が入っている)。

ビデオファイルの選択

アラインポイントの設定は適当に真ん中あたりを指定。

アラインポイントの設定

スタック処理はさすがに時間がかかった。

ASIAIRでのスタック

スタック後の画像はASIAIR内に保存される。

画像処理

スタック後の画像をパソコンに移して画像処理をしてもいいが、今回はそれもASIAIR上にて実施した。

スタック後にEditに入ることが出来る。

まずトリミングで月の写っている部分だけに切り出しを行った。

トリミング

画像回転もできるので、月の北を上にした。

画質調整は、シャープネス、明るさ、コントラストを変えられるようだ。

画質調整

これは適当に見栄え良くなるように調整。

フロッピーディスクアイコンでタブレット内に保存された。

月齢12 (ピクセル等倍切り出し)・全てASIAIRアプリにて処理/BORG71FL+レデューサー0.72xDGQ(288mm F4.1)/ Comet BPフィルター/ASI294MC Pro

編集画像はタブレットの方に保存されるので、このあと他のアプリで細かく再編集できるし、その結果をSNSなどに送ることもできる。

f=288mmの短焦点、画素ピッチ粗めセンサー、ナローバンドフィルターという月に合わない組み合わせで撮影した画像をピクセル等倍で切り出した割には、そこそこまともに写っていると思う。パソコンを全く使わず全てASIAIRだけで完結できるので、月没待ちなどの間の気晴らしに撮ってみても面白いかと思う。

ただし、スタックに時間がかかりその間ASIAIRアプリが使えないので注意が必要なのと、スタック後の処理は(おそらく)単なるシャープネス処理であり、RegiStaxによるWavelet処理のようにスタック後画像の品質を最大に引き出せていない可能性がある。ASIAIRアプリでの編集処理はあくまでも暫定的なお気軽処理ということだと思う(もちろん元動画やスタック後画像を後でパソコンで本格処理することはできる)。

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