ステライメージのガイドエラー補正にStarNet++ V2による星消しを併用

ステライメージのガイドエラー補正

星雲星団や銀河の撮影をしたとき、星像がいびつになったり伸びたりしてしまうことはよくある。

原因はガイド不良や鏡筒・接眼部・ガイド鏡などのたわみ、光軸の不備等、色々と考えられる。それらを全て解決してシャープで真円の星像にするのが理想ではあるが、その夜のうちには解決できない場合のほうが多い。そういうときには快晴を無駄にするのももったいないので、とりあえずそのまま撮影する。

その後、画像処理に手を付けてみたところで、やっぱり星像が歪んでいるのを見ると、やる気も失せてくるが、それでも何とかしてリカバリーするしかない。

そういうときによく使うのが、ステライメージ9の「ガイドエラー補正」。これは「比較暗」処理を応用して、歪んだ星像を削り、丸くするものらしい。ただし、これを用いると星雲などの背景部分にも影響が及んでしまう。

下の画像はR200SS+エクステンダーPH+ASI294MC ProでM90を撮影して、スタックとストレッチ、ノイズ低減のみ行った画像をピクセル等倍で切り出したもの(この撮影の記事はこちら)。

M90 元画像
M90 元画像(ピクセル等倍切り出し)

星像が横に伸びてしまっている。これはガイドエラーではなく、おそらく光軸のズレかどこかのたわみによるもの。撮影開始時には正常だったが、時間経過とともに変わってしまうので、鏡筒の向きが関係している。

これをステライメージ9の「ガイドエラー補正」でそのまま処理すると下の画像のようになる。

ステライメージ9 ガイドエラー補正適用後
ステライメージ9 ガイドエラー補正適用後

背景が荒れてしまい、銀河にも影響が及んでいるし、星の両脇が黒くなっている。

パラメータは下の通り。

ステライメージ9 ガイドエラー補正パラメータ

ステライメージ9 ガイドエラー補正パラメータ

「黒縁抑制」の値を大きくすれば背景の荒れや星の両脇の黒い部分は消えてくるが、その分、星像の補正も弱くなり伸びたままになるので、補正適用の意味が失くなってしまう。


StarNet++ V2.0を併用する方法

そこで、最近では先日バージョンアップして飛躍的に性能向上した「StarNet++ V2.0」で星を分離して適用することにしている。StarNet++ V2.0に関する記事はこちら

まず、PixInsightのプラグインで「星消し画像」と「星のみ画像(Star mask)」に分離する。

StarNet++ V2.0による星消し画像
StarNet++ V2.0による星消し画像
StarNet++ V2.0による星のみ画像
StarNet++ V2.0による星のみ画像

PixInsightが無い場合でも、GUI版のStarNet++を使って星消し画像を作成し、ステライメージで元画像から減算合成すれば星のみ画像はできると思う。

次に、「星のみ画像」についてステライメージ9の「ガイドエラー補正」を適用する(パラメータは上で紹介した例と同じ)。

星のみ画像 ガイドエラー補正済み
星のみ画像 ガイドエラー補正済み

そして、この補正済みの星のみ画像を、星消し画像と合成する。

合成はステライメージの加算合成で良いと思うが、私は細々とした調整が便利なPhotoshopを用いている。

このとき、星のみ画像ではガイドエラー補正で星の輝度が上がっているのと、星の周りの暗い部分で黒縁が発生しているので、合成後の画像が自然に見えるようにレベル補正で調整している。また、合成方法は「スクリーン」か「覆い焼き(リニア)加算」のどちらかを用いる。これはそのケースによって自然に見える方を使っている。

Photoshopによる合成
Photoshopによる合成

合成後の画像は↓。

合成後 完成画像
合成後画像

背景や銀河に影響を及ばさずに星像の補正ができている。

ただしこの画像は銀河部分の画像処理を全くしていない。実際には「星なし画像」で星雲や銀河の強調など画像処理を先に行い、最終段階近くで「星のみ画像」を合成する。

例えば下の画像のような感じ。

星なし画像(銀河)の強調処理後、星のみ画像を合成(ピクセル等倍)
星なし画像(銀河)の強調処理後、星のみ画像を合成(ピクセル等倍)

今回の例は、ピクセル等倍のままではノイズが目立つので縮小したほうが良さそう。


ステライメージで選択マスクを併用する方法

今回は、ガイドエラー補正の背景への影響を避けるために、StarNet++による星画像の分離を行ったが、「選択マスク」を用いればステライメージだけで完結できる。

ステライメージの「範囲選択」ー「選択マスク作成」で、パラメータを適度に調整し、下のようなマスクを作成して元画像に適用する。

ステライメージで作成した選択マスク
ステライメージで作成した選択マスク

このマスクを適用したままでガイドエラー補正を行うと下のようになる。

選択マスクを適用してガイドエラー補正
選択マスクを適用してガイドエラー補正

この方法でも背景への影響を避けられるが、選択マスクを適切に作ってやる必要がある。また、後の画像処理で結局StarNet++による星分離を行うのであれば、今回の方法のほうが楽と思う。

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